1.高槻市は10月23日、朴一氏による外国人労働者と移民をテーマとする職場の人権啓発講座を開催する。
2.2025年10月末の外国人労働者は257万1037人に達し、2027年4月には育成就労制度が始まる。
3.外国人労働者の受入れでは、経済効果だけでなく、適正な労働条件、転職の自由、差別防止、地域での生活保障を考える必要がある。
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外国人労働者は日本経済の脅威なのか
大阪府高槻市は2026年10月23日、高槻市立生涯学習センターで職場の人権啓発講座を開催する。演題は「外国人労働者や移民は日本経済の脅威か?」。大阪公立大学名誉教授の朴一氏が講師を務め、午後3時30分から5時まで実施する。
講座は高槻市、高槻商工会議所、高槻地区人権推進員企業連絡会、高槻就労支援協議会が共催する。定員は申込順50人、参加費は無料となっている。
朴氏は大阪市立大学経済学部の教授などを歴任し、経済学や外国人・移民をめぐる問題について研究・発言してきた。講演会は、外国人労働者の受入れを経済面から検討しながら、企業における人権問題を考える機会となる。
外国人労働者は257万人を超えた
厚生労働省が2026年1月に公表した「外国人雇用状況」の届出状況によると、2025年10月末時点の外国人労働者は257万1037人となり、前年から26万8450人増加した。
外国人を雇用する事業所数は37万1215か所で、いずれも2007年の届出義務化以降の最多となった。
国籍別では、ベトナムが60万5906人で最も多く、中国の43万1949人、フィリピンの26万869人が続く。
在留資格別では、専門的・技術的分野の在留資格が86万5588人、身分に基づく在留資格が64万5590人、技能実習が49万9394人だった。
この数字は、外国人労働者が多様な産業や職種で働いていることを示している。ただし、この統計は事業主からの届出に基づくもので、特別永住者などは対象から除かれる。日本に暮らす外国人全体を集計した数字ではない。
「外国人労働者」と「移民」は区別が必要
外国人労働者に関する議論では、「移民」という言葉が使われることがある。しかし、両者は必ずしも同じ意味ではない。
外国人労働者は、日本で働く外国籍の人を主として捉える概念である。一方、移民は国境を越えて生活の拠点を移す人を指す場合が多く、就労だけでなく、家族、教育、住居、定住などの問題も関係する。
例えば、一定期間働いた後に帰国することを予定している人と、家族とともに長期間日本で暮らす人では、必要な制度や支援が異なる。
労働力不足への対応を検討する場合には、産業別の労働需要や雇用条件を考える必要がある。定住する外国人が増えることによる地域への影響を検討する場合には、日本語教育、住宅、学校、医療、行政手続なども対象になる。
これらを区別しなければ、短期的な雇用政策と長期的な地域政策を混同する可能性がある。
経済的な利益と負担をどう比較するか
外国人労働者の受入れについては、人手不足の緩和や生産活動への参加が利点として挙げられる。一方、社会保障や教育、医療などの行政サービスに関する負担を懸念する意見もある。
双方の問題は、政策評価の対象となる。
ただし、外国人労働者が増えたという事実だけで、経済への影響を一方向に判断することはできない。
経済的な影響を評価するには、就労する産業、賃金水準、税や社会保険料の負担、滞在期間、行政サービスの利用状況などを含めて検討する必要がある。
賃金への影響についても、外国人労働者の存在だけで説明できるものではない。産業の生産性、企業の雇用慣行、国内労働者の不足状況、最低賃金など、複数の条件が関係する。
外国人を雇用する企業が適切な労働条件を確保しているかという問題も重要になる。
技能実習から育成就労制度へ
外国人労働者をめぐる制度は、2027年4月に大きく変わる。
2024年6月に成立した関連法の改正により、技能実習制度を発展的に解消し、新たに育成就労制度を設けることが決まった。制度の運用開始は2027年4月1日である。
従来の技能実習制度は、技能移転を通じた国際貢献を目的としてきた。これに対し、育成就労制度は、人材育成と日本国内の人材確保を目的とする。
大きな変更点の一つが、一定の条件の下で本人の意向による転籍を認めることである。
技能実習制度では受入れ先を変更することに厳しい制約があり、不当な労働条件から離れにくいという問題が指摘されてきた。
育成就労制度では、一定の就労期間や技能、日本語能力などの要件を満たす場合、本人の意向による転籍が認められる。
ただし、無条件に自由な転職ができる制度ではない。制度の実効性を判断するには、法律上の転籍制度だけでなく、実際に不適切な雇用環境から離れられるかを確認する必要がある。
外国人労働者の権利は国籍で変わるのか
労働基準法第3条は、国籍を理由とする労働条件の差別的取扱いを禁止している。
外国人労働者にも、日本国内の労働関係法令が原則として適用される。
しかし、法律上の権利が保障されていても、本人が制度を理解し、実際に利用できるとは限らない。
日本語による労働契約の説明が十分に理解できない場合や、相談先を知らない場合、賃金不払いや長時間労働などの問題が発生しても申告しにくいことがある。
在留資格によって就労できる業務が制限されている場合には、雇用主との関係が在留や生活の安定に直接影響することもある。
そのため、外国人労働者の権利保障では、法令遵守だけでなく、理解できる言語による説明、相談機関へのアクセス、雇用主から不当な圧力を受けずに問題を申告できる環境が必要となる。
政策への批判と外国人差別を区別する
外国人労働者の受入れ規模や、受入れに伴う行政負担、労働市場への影響について議論することは、政策を検討するうえで必要である。
しかし、政策に対する批判と、外国人という属性を理由に個人を排斥する行為は異なる。
外国人労働者をめぐる問題が生じた場合、その原因が雇用制度、企業の労働条件、行政サービスの整備状況などにあるのかを区別して検討する必要がある。
国籍や出身地域だけで個人の行動や能力を説明すれば、偏見や差別を強める可能性がある。
高槻市の講演会は、外国人労働者の受入れを経済政策として考えるとともに、働く人の権利をどのように保障するかを検討する機会となる。2027年の育成就労制度開始を控え、企業にとっても外国人雇用のあり方を見直す契機となる。
高槻市「職場の人権啓発講座(朴一さん講演会)」 URL:https://www.city.takatsuki.osaka.jp/soshiki/58/136116.html
厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」 URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_68794.html
出入国在留管理庁「育成就労制度の制度概要・関係法令」 URL:https://www.moj.go.jp/isa/03_00163.html
出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」 URL:https://www.moj.go.jp/isa/applications/faq/ikusei_qa_00002.html

