尾道市で第39回人権講演会 川村エミコ氏の講演から考える自己肯定感と差別

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この記事のポイント

1.尾道市は11月28日、第39回「いのち・愛・おのみち」人権講演会を開催し、川村エミコ氏が登壇する。
2.同日には第45回全国中学生人権作文コンテストの入賞者表彰式も実施する。
3.自己肯定感を育むことと、差別やいじめを生み出す環境を改善することは異なる課題であり、双方から考える必要がある。

第39回「いのち・愛・おのみち」人権講演会・おのみち市民大学講座

川村エミコ氏が「ポジティブでいられる理由」を語る

広島県尾道市は2026年11月28日、しまなみ交流館で第39回「いのち・愛・おのみち」人権講演会・おのみち市民大学講座を開催する。お笑いコンビ「たんぽぽ」の川村エミコ氏が「今のわたしがポジティブでいられる理由」をテーマに講演する。

午後1時30分に開演し、午後3時に終了する予定。定員は690人で、入場無料、事前申込制となっている。会場には手話通訳があり、1歳から未就学児までを対象とした定員5人の託児にも対応する。申し込み期限は11月20日。

講演に先立ち、午後1時からは第45回全国中学生人権作文コンテストの入賞者表彰式が開かれる。尾道人権擁護委員協議会が関わる表彰式と著名人の講演を組み合わせ、市民が人権について考える機会を設ける。

自己肯定感と周囲からの評価

今回の講演の演題から考えられる問題の一つは、自己肯定感と他者からの評価との関係である。

学校や職場では、容姿、性格、能力、家庭環境などを理由に、周囲から否定的な評価を受ける場合がある。本人の努力では変えられない属性を理由に不当な扱いを受けたり、人格を傷つける言動を繰り返し受けたりすることは、人間の尊厳に関わる問題となる。

自己肯定感は、本人の考え方だけで形成されるものではない。家族、学校、友人、職場などの人間関係も影響する。

例えば、学校で繰り返しいじめを受けた子どもが自信を失う場合、本人の心理的な問題だけを取り上げても、問題の全体像は理解できない。周囲の言動や学校の対応、相談できる環境の有無なども検討しなければならない。

被害者に「強くなること」を要求していないか

差別やいじめを受けた人に対して、「もっと前向きに考えればよい」「気にしないようにすればよい」と助言することがある。

しかし、こうした助言だけでは、不当な扱いを行った側の責任が見えにくくなる。

いじめを受けた子どもが学校へ通えなくなったとしても、それを本人の忍耐力の不足と解釈することは適切ではない。職場でハラスメントを受けた人が退職した場合も、本人の考え方だけで結果を評価することはできない。

困難を乗り越えた人の体験談には、聴衆が自身の生活を振り返るきっかけとなる側面がある。一方、個人の体験をすべての人に当てはめ、同じように行動できない人を否定することには問題がある。

自己肯定感を育むための心理的支援と、差別やいじめを防ぐための制度的・組織的対応は、それぞれ別の役割を担う。

人権作文コンテストが果たす教育的役割

尾道市の講演会では、第45回全国中学生人権作文コンテストの入賞者表彰式も実施される。

法務省と全国人権擁護委員連合会は、1981年度から全国中学生人権作文コンテストを実施している。家庭生活や学校生活で得た体験を文章にまとめ、基本的人権への理解を深めることを目的とする。

法務省によると、2025年度の第44回コンテストには、全国6377校から72万1058編の応募があった。

作文を書く過程では、身近な出来事を振り返り、他者がどのような不利益を受けているか、差別や偏見がなぜ生じるのかを考えることができる。

ただし、作文の応募数が多いことだけで、人権教育の成果を判断することはできない。学習後に児童生徒の認識や行動がどのように変化したか、学校での差別やいじめの防止につながったかは、別に検証する必要がある。

作文の中で子どもの声をどう扱うか

人権作文コンテストでは、子どもが自分の体験や考えを文章で表現することになる。

その際、子どもがどのような内容を書きたいと考えているのかを尊重することが必要となる。

大人が望む結論に合わせて作文を書かせたり、子どもが話したくない経験を詳しく書くよう促したりすれば、意見表明の自由が損なわれる可能性がある。

法務省も作文の書き方について、自分自身の体験や考えを自分の言葉で表現することを基本としている。

人権教育では、子どもに正しい答えを覚えさせるだけでなく、異なる立場の人が何を感じ、どのような問題に直面しているのかを考える力を育てることが課題となる。

講演会への参加機会そのものを保障する

今回の尾道市の講演会では、手話通訳と託児が用意される。

これらは会場運営上のサービスであるとともに、障害のある人や子育て中の人が学習機会を利用するための対応でもある。

聴覚障害のある人が講演内容を理解するには、音声情報以外の手段が必要となる場合がある。幼い子どもを養育している人にとっては、託児の有無が参加できるかどうかを左右することもある。

もっとも、手話通訳や託児が設けられたことだけで、参加上の障壁がすべて解消されるわけではない。会場までの移動、申込手続、情報提供の方法なども関係する。

人権をテーマとする行事では、講演内容と同時に、主催者自身が参加者の多様な事情にどのように対応しているかを確認することも必要となる。

39回続く啓発活動の成果をどう測るか

尾道市は、毎年12月4日から10日までの人権週間に関連して、人権尊重の理念を市民に伝えるための講演会を継続してきた。

講演会には、人権問題に普段接する機会の少ない市民も参加しやすいという利点がある。

しかし、講演会への参加によって得られた知識が、家庭や学校、職場などの日常生活でどのように生かされたかという問題も残る。

例えば、講演後の意識調査だけでなく、地域の相談制度の周知状況や、学校や団体がどのような学習活動を実施したかを確認する方法も考えられる。

出典

道市「第39回『いのち・愛・おのみち』人権講演会・おのみち市民大学講座を開催します」 URL:https://www.city.onomichi.hiroshima.jp/soshiki/13/85169.html

法務省「全国中学生人権作文コンテスト」 URL:https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken111.html

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人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、裁判所、企業、公益団体、国際機関などが公表する一次情報を確認し、差別、子ども、障害者、高齢者、教育、福祉、司法・制度、外国人、ビジネスと人権などに関するニュース、制度解説、独自調査を発信しています。記事では出典を明示し、事実関係を確認したうえで、関連する法制度や統計、過去の経緯などを参照しながら、人権上の論点や社会的背景を整理しています。

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