1.三重県は11月17日、第2回カスタマーハラスメント防止対策セミナーを津市とオンラインで開催する。
2.2026年10月1日から改正労働施策総合推進法が施行され、カスハラ防止措置は事業主の義務となった。
3.正当な苦情や障害者からの合理的配慮の申出をカスハラと混同しないため、企業には相談窓口だけでなく判断基準と対応手順の整備が必要になる。

法施行から約1か月半後に開催
三重県は11月17日午後1時から、津市の三重県総合文化センターで「第2回カスタマーハラスメント防止対策セミナー」を開催する。県内企業の経営者や人事・労務担当者などを対象に、会場30人、オンライン30人を募集する。8月19日の第1回に続く開催だが、第2回は制度上の意味が異なる。2026年10月1日から改正労働施策総合推進法が施行され、カスタマーハラスメント防止措置が事業主の義務となったためだ。三重県公式サイト
セミナーでは、株式会社ナレッジリーンの古田あゆみ氏が、カスハラの基礎知識、事例による判断、防止措置、未然防止、初期対応、事後対応などを解説する。県のアドバイザー派遣事業を利用した県内企業の取組事例も紹介し、終了後には会場参加者を対象として1社30分、4社程度の個別相談会を行う。単なる啓発ではなく、各社の対応体制を具体化する内容となっている。三重県公式サイト
10月1日から「自主的対策」ではなく法定義務に
2025年6月に公布された改正労働施策総合推進法などにより、2026年10月1日から事業主にはカスタマーハラスメントを防止するために必要な雇用管理上の措置が義務付けられた。厚生労働省は2026年2月26日に「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」を告示している。厚生労働省
企業側では、カスハラを許容しない方針の明確化、労働者への周知、相談窓口の設置、事案発生時の事実確認、被害を受けた労働者への配慮、再発防止などを組織として進める必要がある。これまで現場担当者の経験に依存していた顧客対応についても、どの段階で管理職へ引き継ぐか、警察や弁護士へ相談するか、記録をどのように残すかといった実務設計が必要になる。
「苦情を言った客=カスハラ」ではない
制度運用で特に注意が必要なのが、正当な苦情との区別である。商品の不具合、サービス上のミス、行政や医療機関からの説明不足について利用者が改善を求めること自体は、カスハラではない。厚生労働省も、消費者心理や障害特性などについて労働者の理解を深めるための研修や資料活用を事業主に示している。厚生労働省
障害のある利用者が筆談、介助、説明方法の変更など合理的配慮を申し出る場合もある。対応に時間がかかる、通常とは違う方法を求められたという理由だけで迷惑行為として処理すれば、障害者差別解消法との関係で別の問題が生じ得る。カスハラ対策は従業員を守る制度だが、その実効性を高めるためにも「要求内容」と「要求の手段・態様」を分けて判断する必要がある。
判断を個人に背負わせない体制へ
従業員が顧客を前にして「これはカスハラか」を一人で判断する体制では、対応のばらつきが生じる。過度に我慢すれば従業員の安全が損なわれ、反対に判断基準が広すぎれば正当な顧客の申出を排除する。企業が準備すべきなのは「カスハラには毅然と対応する」という宣言だけではなく、具体例、報告経路、対応権限、記録、相談後の労働者支援まで含む運用基準である。
三重県の11月17日のセミナーは、法施行前の啓発から、法施行後の履行確認へと性格が変わる。参加企業にとっては、相談窓口を設けたかどうかだけでなく、自社の顧客対応ルールが改正労働施策総合推進法と厚生労働省指針に沿って実際に機能するかを点検する機会となる。
三重県「第2回カスタマーハラスメント防止対策セミナーを開催します」
URL:https://www.pref.mie.lg.jp/TOPICS/m0030700677.htm
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/
厚生労働省「令和7年労働施策総合推進法等の一部改正について」
URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html

