山口県、認知症本人の視点を学ぶ「オレンジパワー活用セミナー」開催へ

山口県は、認知症の本人の視点や活動を地域施策に生かすことを目的に、「令和8年度オレンジパワー活用セミナー」を開催する。県は、認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域で自分らしく暮らせる環境・体制づくりを進めるため、支援者がピアサポート活動等の重要性を学ぶ機会として同セミナーを位置づけている。対象は、行政の認知症施策担当者、認知症地域支援推進員、認知症疾患医療センター職員、認知症介護指導者、認知症の家族会員などで、定員は24人、受講料は無料。

セミナーは全3回のコースで実施される。第1回は2026年5月13日、山口県健康づくりセンターで開かれ、認知症介護研究・研修東京センターの永田久美子センター長特命補佐が「本人の声を活かした小さな改善や取組を実践しよう」と題して講演する。第2回は6月17日に同会場で行われ、岩国市高齢者支援課による令和7年度の活動紹介や、若年性認知症の人からのメッセージを通じて、本人の実際の声に触れる内容となっている。第3回は2027年1月中旬を予定し、参加者が実践した活動の紹介や気づきの共有を行う。

認知症施策は、これまで「支援する側」がサービスを設計し、本人や家族を対象者として位置づける発想になりがちだった。しかし、近年は、認知症の人を地域づくりの当事者として捉え、本人の経験や希望を施策に反映する考え方が重視されている。2024年には、共生社会の実現を推進するための認知症基本法に基づき、認知症施策推進基本計画が閣議決定されており、本人と家族の意向の尊重が政策上も重要な柱となっている。

今回のセミナーで特徴的なのは、「共に活動できるパートナーと2人1組」で申し込む方式としている点である。案内では、市町の認知症施策担当者と認知症地域支援推進員、認知症地域支援推進員と家族会員、認知症疾患医療センター相談員と認知症の本人などが例示されている。これは、研修を単なる知識習得で終わらせず、受講後に地域で実践へ移すことを想定した設計といえる。認知症の本人の声を聞くことは、移動、買い物、医療、介護、地域活動、相談支援など、日常生活の不便や不安を具体的に見直す出発点になる。

人権の観点から見ると、認知症施策の中心には、本人の尊厳、意思決定支援、社会参加の保障がある。認知症になった人を「保護される存在」としてのみ扱えば、本人の希望や能力が見えにくくなり、地域生活からの排除にもつながりかねない。山口県のセミナーは、支援者が本人の言葉から学び、地域の小さな改善を積み重ねるための人材育成の場である。行政、医療・介護関係者、家族会、本人が同じ場で学ぶことにより、認知症になっても孤立せず、役割を持って暮らせる地域づくりを具体化できるかが問われる。

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