1.大阪府が障がい福祉サービス事業所や学校、保育所、医療機関の管理者らを対象に、虐待防止・権利擁護研修を実施する。
2.性的虐待、身体拘束、通報後の対応、虐待防止委員会の運営、当事者の声などを動画講義とグループワークで学ぶ。
3.研修受講を個人の知識習得で終わらせず、事業所内の伝達研修や委員会運営、日常の支援改善へ反映できるかが実効性を左右する。

大阪府は2026年8月1日午前10時から28日午後11時59分まで、「障がい者虐待防止・権利擁護研修」の受講者を募集する。対象は、府内の障がい福祉サービス事業所の管理者、サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者らを対象とするAコースと、学校、保育所、認定こども園、医療機関などの職員を対象とするBコース。受講料は無料で、大阪府行政オンラインシステムから申し込む。
講義動画はYouTubeで9月29日から12月14日午後6時まで配信する。Aコースは動画講義に加え、大阪府教育会館たかつガーデン(大阪市天王寺区)で6時間のグループワークを行う。開催日は10月26日、28日、30日、11月27日、12月14日の5日間で、受講者はいずれか1日に参加する。演習の定員は900人で、申込みが定員を超えた場合は抽選となる。Bコースは動画講義のみで、定員を設けていない。
研修内容は、障害者虐待防止法の概要、性的虐待の防止、身体拘束・行動制限の適正化、通報の意義と通報後の対応、法人・事業所の理念、管理者や虐待防止責任者の役割などで構成する。「当事者の声」「大阪府内の障がい者虐待の状況」「ヤングケアラーの現状と取組み」も盛り込む。Aコースの申込みは事業所番号ごとに1人までで、受講者には研修内容の職場内共有や伝達研修の実施を促している。
障害者虐待防止法は2012年10月に施行され、虐待を受けたと思われる障害者を発見した者に通報義務を課している。障がい福祉サービス事業所では、職員研修、虐待防止委員会の設置、虐待防止責任者の配置が2022年度から義務化された。学校、保育所、医療機関の管理者にも、研修や相談体制の整備などの間接的な防止措置が課されている。ただし、今回の大阪府研修自体は必須研修や資格取得研修ではなく、修了証も交付されない。法令上の義務と府研修への参加は区別する必要がある。
大阪府内では2024年度、障がい者福祉施設従事者等による虐待の相談・通報・届出が481件あり、106件を虐待と判断した。内訳は身体的虐待53件、心理的虐待52件、性的虐待14件などだった。全国でも相談・通報は5,870件、虐待判断は1,267件に上り、いずれも前年度を上回った。件数の増加には通報意識の浸透など複数の要因があり、数字だけで虐待行為の増減を断定することはできないが、現場の管理体制を継続して点検する必要性は明確である。
人権上の論点は、管理者や職員の個人的な倫理だけに虐待防止を委ねないことにある。身体拘束、性的虐待、不適切な言葉遣い、通報の抑制などを組織上の問題として検証し、本人の意思確認、記録、職員間の協議、第三者への通報につなげる仕組みが欠かせない。Aコースを受講する管理者らが、動画とグループワークの内容を各事業所の虐待防止委員会や伝達研修へ移し、日常の支援方法を修正できるかが、大阪府の900人規模の研修を利用者の権利擁護につなげる条件となる。
大阪府「令和8年度大阪府障がい者虐待防止・権利擁護研修(障がい福祉サービス事業所等コース)を実施します」
URL:https://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/fumin/o090050/prs_51022.html
参考資料 大阪府「令和8年度 障がい者虐待防止・権利擁護研修 募集要項」
URL:https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/134600/r8youkou_jigyousyo1.pdf
参考資料 大阪府「令和6年度府内市町村における障がい者虐待の対応状況等について」
URL:https://www.pref.osaka.lg.jp/hodo/fumin/o090050/prs_51014.html

