DV支援団体が岡山市虐待死事件の裁判終了後に声明を公表

全国女性シェルターネットは、加盟団体「DV防止サポートシステムをつなぐ会・岡山」が公表した「岡山市での虐待死事件とその後の裁判を終えての声明」を紹介している。声明は、岡山市で発生した女児虐待死事件と、母親である被告人に対する刑事裁判を受け、DV被害者の置かれた状況を司法や支援機関がどのように理解すべきかを問う内容である。個別事件への評価にとどまらず、DVと児童虐待を切り離して扱うことの限界を示す問題提起として受け止める必要がある。

声明によると、同会は2001年に発足し、DV防止や女性の人権に関わる課題について、公的機関や民間団体とのネットワークづくり、支援体制の充実、普及・啓発に取り組んできた団体である。今回の声明では、事件の背景に交際相手による行動制限や生活費管理などの支配があったとし、母親がDV被害下に置かれていた可能性を重視している。そのうえで、裁判においてDV被害者の心理状態や行動の制約が十分に考慮されたのか、司法判断のあり方に疑問を呈している。

声明が特に強調しているのは、DVと児童虐待を関連する問題として扱う支援システムの必要性である。家庭内でDVが存在する場合、加害者の支配や暴力は配偶者・交際相手だけでなく、子どもにも及ぶことがある。児童虐待対応では子どもの安全確保が最優先である一方、非加害親がDVの支配下にある場合、単純に「親なのだから守るべきだった」と評価するだけでは、被害の構造を見落とすおそれがある。児童相談所、警察、福祉機関、司法機関、民間支援団体が、DVの存在を前提に情報共有と判断を行う体制が問われる。

制度面では、改正DV防止法や、2024年4月に施行された困難な問題を抱える女性への支援に関する法律との接続も重要となる。女性支援新法は、困難を抱える女性への支援について、人権の尊重や本人の立場に寄り添った包括的支援を掲げている。DV被害、貧困、孤立、子育て、住まい、法的手続は相互に絡み合うため、相談窓口を設けるだけでは足りない。被害者が支配から離れ、安全な生活を再建できるよう、行政、司法、医療、福祉、民間団体が継続的に関与する仕組みが必要になる。

今回の声明は、子どもの命を守る責任を曖昧にするものではない。むしろ、虐待死を防ぐためには、家庭内で誰が支配し、誰が孤立し、どの段階で外部支援が介入できたのかを検証する視点が欠かせないことを示している。司法関係者にはDVの支配構造を理解する研修や専門的知見の活用が求められ、自治体や支援機関には、母子を分断せずに安全確保を図る支援設計が求められる。事件を個人の責任だけで閉じず、DV被害者支援と児童虐待防止をつなぐ制度運用へ反映できるかが、今後の課題となる。

出典

全国女性シェルターネット
URL:https://nwsnet.or.jp/archives/4415

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