トランスジェンダーへの否定的言動が3年で10ポイント増加

認定NPO法人虹色ダイバーシティは2026年3月31日の「トランスジェンダー可視化の日」に合わせ、トランスジェンダーの人々を取り巻く差別や生活上の困難について声明を発表した。同法人が公開した「LGBTQの仕事と暮らし白書2026」では、学校や職場で「性別変更に関するネガティブな発言」を見聞きしたトランスジェンダー当事者の割合が、2022年の37.4%から2024年には47.4%へ上昇したとされている。LGBT理解増進法の成立後も、職場でLGBTQ施策が実施されていない割合は54.9%と半数を超えており、制度や支援が十分に行き届いていない状況が示された。

トランスジェンダーをめぐる人権課題は、単に呼称やトイレ利用など一部の場面に限られるものではない。学校、職場、医療、住居、家族関係、行政手続など、生活全体に関わる問題である。調査では、トランスジェンダーの心理的安全性が46.2%にとどまり、他の属性と比べても低い傾向が続いていることも示された。また、トランス女性の約37%が年収200万円未満、トランスジェンダーの約12%が「お金がなく食事を抜いた経験がある」と回答しており、差別や孤立が経済的困窮とも結び付いていることがうかがえる。

近年、海外ではトランスジェンダーの権利を制限する動きが広がり、その言説がSNSを通じて日本にも流入していると同法人は指摘している。性の多様性をめぐる議論では、不安や反発が特定の少数者に向けられ、「安全」や「保護」の名の下に、当事者の存在そのものを否定する言説につながることがある。人権の観点からは、女性や子どもの安全を守ることと、トランスジェンダーの尊厳を守ることを対立的に扱うのではなく、すべての人が暴力や差別から守られる制度設計を考える必要がある。

職場においては、LGBTQ施策を掲げるだけでは不十分である。採用、配置、評価、服装規定、通称名の使用、健康診断、相談窓口、ハラスメント防止研修など、日常の人事・労務管理の中で具体的な対応を整えることが求められる。学校でも、制服、名簿、呼称、相談体制、いじめ防止の取組を通じ、性自認や性的指向を理由に児童生徒が孤立しない環境をつくる必要がある。制度があっても、周囲の発言や態度によって当事者が安心して使えなければ、実効性は乏しい。

今回の声明と調査結果は、トランスジェンダー差別が「理解の不足」にとどまらず、職場施策の遅れ、生活困窮、心理的安全性の低下、オンライン上の排除言説と結び付いていることを示している。自治体、企業、学校、支援団体には、当事者の声を踏まえた相談体制と啓発、差別的言動への対応、安心できる居場所づくりを進めることが求められる。性の多様性をめぐる社会的対立が強まる局面だからこそ、断片的な情報ではなく、調査データと現場の声に基づいた冷静な議論が必要である。

出典

虹色ダイバーシティ
URL:https://nijiirodiversity.jp/5847/

タイトルとURLをコピーしました