青森県、いじめ防止動画を公開 「言刃」から考える子どもの人権

青森県いじめ防止キャンペーンの画像

青森県教育委員会は、「いじめ防止キャンペーン」推進事業の一環として、令和7年度に制作した「いじめ防止キャンペーン動画」をYouTubeで公開している。動画は、令和7年度いじめ防止標語コンクール優秀賞作品「気づいてる? 相手に向けたの 言刃だよ」をテーマに制作されたもので、「まじめだね」「マイペースだね」「個性的だね」という言葉を題材にした3パターンで構成されている。県は、ゴールデンウイーク、夏休み、冬休みの期間に、YouTube、Instagram、TikTokでWeb広告を配信する予定としており、配信期間は令和8年5月1日から5月15日、7月16日から8月31日、12月16日から令和9年1月31日までとされている。

この取組の特徴は、いじめ防止を学校内の指導や標語掲示にとどめず、子どもたちが日常的に触れるSNSや動画広告の空間に広げている点にある。いじめは、教室や部活動だけでなく、SNS上の投稿、グループチャット、短いコメント、画像の共有などを通じても発生する。特に、軽い冗談や「いじり」として発せられた言葉が、相手にとっては傷つきや孤立につながる場合がある。今回の動画が「言葉」を中心テーマに据えていることは、暴力や明確な悪口だけでなく、日常の中の何気ない表現が相手の尊厳を損なう可能性を伝えるものといえる。

令和7年度のいじめ防止標語コンクールには、小学校3,795作品、中学校2,149作品、高等学校172作品、特別支援学校58作品、一般4作品の計6,178作品が寄せられた。県は、優秀賞や審査員特別賞の受賞者について、各学校で校長から表彰状を授与したとしている。応募数の多さは、学校教育の中でいじめ防止を考える機会が広く設けられていることを示す一方、子どもたち自身が、いじめや言葉の暴力を身近な問題として受け止めていることもうかがわせる。標語を募集し、優秀作品を動画化する手法は、子どもを啓発の受け手としてだけでなく、いじめ防止のメッセージを発信する主体として位置づける意味を持つ。

人権の観点から見れば、いじめ防止は、単なる生活指導や学校秩序の問題ではない。子どもが安心して学び、友人関係を築き、自分の個性を否定されずに学校生活を送る権利に関わる課題である。いじめは、被害を受けた子どもの心身に長期的な影響を及ぼすことがあり、不登校、自尊感情の低下、孤立、進路への影響にもつながり得る。学校には、被害の訴えを待つだけでなく、周囲の子どもが変化に気づき、教職員が早期に把握し、保護者や専門機関と連携して対応する体制が求められる。動画や標語は、その入口として、傍観者にならない意識や、言葉の使い方を見直すきっかけとなる。

一方で、啓発キャンペーンだけでいじめをなくすことはできない。重要なのは、動画を見た後に、学校でどのような対話や振り返りにつなげるかである。授業やホームルームで、どのような言葉が相手を傷つけるのか、なぜ本人が「嫌だ」と言いにくいのか、周囲がどう行動すべきかを具体的に話し合うことが必要となる。家庭や地域にとっても、子どもの言葉遣いやSNS利用を一方的に注意するだけでなく、子どもが不安や違和感を話せる関係をつくることが求められる。青森県の取組は、子どもの発信を起点に、学校、家庭、地域がいじめを人権課題として共有する機会となる。

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