自民党PT、内密出産を巡り制度課題を有識者から聴取

自由民主党の孤独・孤立対策特命委員会「内密出産」について考えるプロジェクトチームは2026年4月14日、妊娠を周囲に知られたくない女性による内密出産をめぐり、韓国とドイツの制度について有識者からヒアリングを行った。目白大学人間学部人間福祉学科の姜恩和教授が韓国の事例を、奈良大学の床谷文雄特別研究員がドイツの事例を説明した。会合では、安全な出産をどう確保するか、妊娠期から出産後までの相談支援をどう整えるか、生まれた子どもの出自を知る権利をどう位置づけるかが主な論点となった。

内密出産は、妊娠を家族や周囲に知られることを強く恐れる女性が、医療機関などに限定して身元を明かし、外部には匿名性を保ったまま出産する仕組みを指す。背景には、予期しない妊娠、性暴力、家庭内暴力、経済的困窮、若年妊娠、家族関係の断絶など、複合的な事情がある。支援が届かなければ、妊婦健診を受けないままの出産、孤立出産、乳児の遺棄や死亡につながるおそれもある。そのため、内密出産をめぐる議論は、単に匿名で産むことを認めるかどうかではなく、母子の生命・健康を守る制度設計として考える必要がある。

韓国の事例については、相談と医療の機能を分け、安全な出産の見通しを制度として確保する仕組みが紹介された。日本では、熊本市の慈恵病院が相談から出産までを一体的に担う「病院ワンストップ型」に近い形で対応してきたが、一つの医療機関や自治体だけに負担が集中する構造には限界がある。姜教授は、安全な出産の確保、核となる相談体制、出産後の支援の3点が重要であり、妊娠中から出産後まで当事者にとって実際に機能する支援が必要だと説明した。

ドイツでは2013年に内密出産制度が成立し、全国の妊娠相談所の専門相談員が、内密出産を望む妊婦の相談から出産後まで支援する仕組みが整えられている。出産前後の費用を国が負担する一方、16歳以上になった子どもが母親の身元情報の開示を求められる制度もあり、母親の匿名性と子どもの出自を知る権利の調整が課題となっている。これは日本で制度化を検討する場合にも避けられない論点であり、出生の秘密を守る必要性と、子どもが将来、自らのルーツを知る利益をどう両立させるかが問われる。

松野博一座長は、4月6日に熊本市の慈恵病院と熊本市役所を視察したことに触れ、病院や自治体だけで内密出産に対応するには限界があるとの認識を示した。内密出産をめぐっては、事前相談体制、性教育、若年女性への支援、医療費負担、出生届、戸籍、養育支援、養子縁組、児童相談所との連携など、多くの制度が関係する。人権の観点からは、妊娠した女性を責めたり孤立させたりするのではなく、安全に相談できる窓口を整えること、生まれてくる子どもの命と将来の権利を守ることを同時に進める必要がある。今回のヒアリングは、内密出産を例外的な現場対応から、国全体の母子支援制度としてどう位置づけるかを考える契機となる。

より詳しく知りたい方は…

妊娠を知られたくない女性たち 「内密出産」の理由
https://amzn.to/4tlx9YC

タイトルとURLをコピーしました