栃木県「性暴力を考える講座」 被害者責任論を同意と力関係から問い直す

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この記事のポイント

1.栃木県と認定NPO法人ウイメンズハウスとちぎは10月24日、「今、大人が受けたい包括的性教育」をテーマに講座を開催する。
2.「被害者にも非がある」という認識は、加害行為の責任を被害者側へ移し、相談や医療、司法へのアクセスを妨げる。
3.2023年施行の改正刑法は、暴行・脅迫だけでなく、恐怖や立場による影響などで「同意しない意思」を形成・表明・全うすることが困難な状態を性犯罪の要件として整理した。

栃木県のサムネイル

■大人が学ぶ包括的性教育

栃木県と認定NPO法人ウイメンズハウスとちぎは2026年10月24日、宇都宮市のとちぎ男女共同参画センター「パルティ」で第2回「性暴力を考える講座」を開催する。講師は助産師・思春期保健相談士の櫻井裕子氏で、テーマは「今、大人が受けたい包括的性教育」。支援者と一般参加者を対象に100人を募集する。

県は開催理由として、子どもへの性的虐待や顔見知り・親しい人からの性被害が起きている一方、「被害を受けた者にも非がある」との誤解や偏見が残り、被害者が誰にも相談できず孤立し、被害が潜在化していると説明している。

■被害者責任論が救済への道を狭める

「なぜ逃げなかったのか」「なぜその場所へ行ったのか」「交際相手なのだから仕方がない」といった問いを、被害者の責任を問う材料に使えば、問題の主体が行為者から被害者へ移る。その結果、本人が「自分にも落ち度があった」と考え、医療、相談、警察、司法へつながらないことも起こり得る。

性暴力の人権問題は、性的行為を強いられることだけではない。被害後に周囲から信じてもらえない、責められる、秘密を守られないと予測することで、救済制度を利用する機会まで失う点にもある。したがって、支援者側の知識や対応も被害回復を左右する。

■刑法も「激しく抵抗したか」だけを見ない

2023年施行の刑法改正では、不同意わいせつ罪・不同意性交等罪が創設された。法務省は、性犯罪の本質的な要素を「自由な意思決定が困難な状態で行われた性的行為」と説明し、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」を要件として整理している。その原因として、暴行・脅迫だけでなく、心身の障害、アルコールや薬物、睡眠、恐怖や驚愕、虐待による心理的反応、経済的・社会的関係上の地位に基づく影響などが例示されている。

上司と部下、指導者と生徒、支援者と利用者、家族などでは、明確な暴力がなくても拒否を表明しにくい力関係が存在する。今回の講座内容の詳細までは公表されていないため、櫻井氏が刑法改正を扱うとは断定できないが、大人が性教育を学び直す際、「拒否したか」だけでなく、相手が自由に選択できる関係だったかを見る視点は欠かせない。

■警察だけではない救済の入口

被害者が直ちに刑事手続を選べるとは限らない。全国の「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」では、全国共通番号#8891から最寄りのセンターにつながり、産婦人科医療、カウンセリング、法律相談などの専門機関と連携した支援を受けられる。

性暴力防止を「被害に遭わないための注意」に偏らせれば、安全確保の責任を被害を受ける側へ戻してしまう。栃木県の講座が支援者と一般の大人を対象にすることには、他者の意思を確認する側、被害を相談された側、支援する側の責任を学び直す余地がある。10月24日の講座を、被害者に行動変容を求める教育ではなく、周囲と制度の対応を問い直す機会としてどう構成するかが人権上のポイントになる。

出典

栃木県「令和8(2026)年度『性暴力を考える講座』の開催について」
URL:https://www.pref.tochigi.lg.jp/c07/houdou/houdou/r8seibouryokuwokanngaerukouza2.html

法務省「性犯罪関係の法改正等 Q&A」
URL:https://www.moj.go.jp/keiji1/keiji12_00200.html

内閣府男女共同参画局「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」
URL:https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/consult.html

関連用語

性暴力
URL:https://jinken-news.com/glossary/sexual-violence/

性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター
URL:https://jinken-news.com/glossary/one-stop-support-center-sexual-violence/

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人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、裁判所、企業、公益団体、国際機関などが公表する一次情報を確認し、差別、子ども、障害者、高齢者、教育、福祉、司法・制度、外国人、ビジネスと人権などに関するニュース、制度解説、独自調査を発信しています。記事では出典を明示し、事実関係を確認したうえで、関連する法制度や統計、過去の経緯などを参照しながら、人権上の論点や社会的背景を整理しています。

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