
広島県は、被爆者の医療や介護に関する不安の軽減を目的に、「被爆者の充実した生活のための医療と介護サポートブック」を改訂し、県ホームページで公開した。広島市への原子爆弾投下から80年以上が経過し、被爆者の平均年齢は86歳を超えている。県は、被爆者本人の現状を踏まえ、体や心に症状が現れた際の対処法、生活と介護に関する具体的な相談、被爆者援護事業や相談先などを、分かりやすく確認できる冊子として整理している。
冊子は、表紙・目次、第1章「いま、被爆者の方は」、第2章「こんなときはどうする?」、第3章「生活と介護の具体的な相談」、第4章「被爆者援護事業のご案内・お問い合わせ先一覧」で構成され、全体版のほか分割版PDFも掲載されている。Q&A形式で紹介されている点は、高齢となった被爆者本人だけでなく、家族、被爆2世、介護に携わる人が、必要な情報にたどり着きやすくするための工夫といえる。
被爆者援護は、医療費助成や各種手当といった制度面だけでなく、高齢期の生活不安、介護負担、心身の変化への対応を含む総合的な支援として捉える必要がある。被爆体験を持つ人が地域で生活を続ける上では、本人の尊厳を守りながら、医療、介護、福祉、相談支援が切れ目なくつながることが重要となる。制度が存在していても、本人や家族が内容を理解できず、相談先に結び付かなければ、実質的な権利保障にはつながりにくい。
人権の観点から見ると、今回のサポートブック改訂は、被爆者を「支援の対象」としてのみ扱うのではなく、日常生活の中で不安を抱えたときに自ら情報を確認し、必要な支援につながるための環境整備として意味がある。被爆者の高齢化が進む中、行政には、制度情報を更新するだけでなく、介護現場や地域の相談支援者にも共有し、本人の生活実態に即した支援へ結び付けることが求められる。被爆2世や介護者にも役立つ資料として周知されることで、被爆者援護を家族任せにせず、地域社会全体で支える基盤づくりにつながる。
広島県「『被爆者の充実した生活のための医療と介護サポートブック』について」
URL:https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/52/supportbook.html

