1.2025年に奈良市を訪れた観光客は延べ1,608.2万人となり、前年から8.2%増加した。
2.外国人訪問者は351.7万人、外国人宿泊者は56.9万人で、いずれも統計開始以来の最多となった。
3.外国人旅行者の増加に伴い、多言語案内、バリアフリー、宗教や生活習慣への対応も観光政策の検証対象となる。

奈良市は7月29日、2025年1月から12月までの観光入込客数調査を公表した。市内を訪れた観光客は延べ1,608.2万人で、前年の1,487.0万人を8.2%上回った。宿泊客は223.9万人となり、現行の統計手法を導入した2009年以降で最多を更新した。宿泊率も13.9%で、前年より0.2ポイント上昇した。
外国人訪問者は351.7万人で前年比18.1%増、外国人宿泊者は56.9万人で2019年を28.4%上回り、いずれも統計開始以来の最多となった。外国人の宿泊率は16.2%。国別の宿泊者シェアは中国40.4%、米国15.8%、台湾8.5%、フランス7.8%、韓国6.6%で、中国が69.5%を占めた2019年に比べて来訪国の構成が分散した。市は米国からの来訪者が2019年比185.8%増、韓国が145.9%増だったとしている。
調査結果を読む際には、観光入込客数が観光地点や交通機関のデータを集計した延べ人数であり、実人数ではない点に留意がいる。観光消費額は1,527.1億円、経済波及効果は1,556億円と推計されたが、後者は2015年奈良市版産業連関表を用いた計算で、観光事業者の売上高そのものではない。2022年以前とは調査手法が異なるため、観光消費額の長期比較にも制約がある。
外国人旅行者の増加を人権面から見ると、評価対象は人数と消費額だけではない。言語、障害、宗教、乳幼児の同伴などに左右されず、移動、情報、宿泊、食事を利用できる環境が整っているかも対象となる。奈良市は観光施設のバリアフリー設備を地域別に公開し、奈良市総合観光案内所では日本語、英語、中国語、韓国語の案内に加え、祈祷室、ベビーケアルーム、車椅子貸し出しを用意している。奈良市共生社会推進課も、言語、宗教、習慣などの違いを背景として、外国人を巡る人権問題が生じていると説明している。
観光庁が2025年11月から2026年1月に4,110人へ行った調査では、訪日中に困った項目として、スタッフとのコミュニケーションが15.4%、混雑が12.9%、交通機関の利用が11.3%、多言語表示の少なさ・分かりにくさが10.9%に上った。奈良市の調査は外国人宿泊者の増加を捉えたが、こうした利用上の障壁や住民生活への影響は測っていない。奈良市観光戦略課が今後、外国人訪問者351.7万人という規模と併せて、案内所やバリアフリー情報の利用実績、旅行者の困りごとを継続的に示せば、市が掲げる「量より質」の観光施策を具体的に検証できる。
奈良市「外国人訪問者数、外国人宿泊者数が過去最多!2025年 奈良市観光入込客数調査について」 URL:https://www.city.nara.lg.jp/site/press-release/272074.html
参考 PR TIMES「奈良市観光入込客数調査について」 URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000453.000036429.html
参考 奈良市「奈良市観光関連施設のバリアフリーへの取り組みについて」 URL:https://www.city.nara.lg.jp/soshiki/107/93837.html
参考 観光庁「訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査」 URL:https://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_00039.html

