ヘイトスピーチ解消法施行から10年 HRNが在日外国人への差別を報告、SNS時代の課題とは

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この記事のポイント

① ヒューマンライツ・ナウ(HRN)は、外国人差別を取材するジャーナリスト安田浩一氏を招いたウェビナーの内容を公表した。
② 報告では、在日コリアンへの差別に加え、埼玉県南部に暮らすクルド人などへの排斥的言動や、SNS上の情報拡散が論点となった。
③ ヘイトスピーチ解消法は2026年6月で施行10年を迎えた。同法自体に直接の刑罰規定はないが、国・自治体に相談、教育、啓発などの取組を求めている。

ヘイトスピーチ
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1.HRNがウェビナー報告を公開

国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ(HRN)」は2026年9月15日、「差別と偏見の現場を取材して~ヘイトスピーチを許さないために」と題するイベント報告を公表しました。

ウェビナーは8月24日に開催され、外国人差別を取材してきたジャーナリストの安田浩一氏が講演しました。

HRNの報告では、在日外国人に対する街頭での排斥的な言動、インターネット上の誹謗中傷、脅迫や落書きなどの問題が取り上げられています。

なお、以下で安田氏やHRNが示した個別の評価・見解については、政府の公式見解や司法判断とは区別して読む必要があります。

2.埼玉県南部のクルド人への差別もテーマに

HRNのイベントでは、近年の課題として埼玉県川口市や蕨市周辺に暮らすクルド人への差別が取り上げられました。

報告では、クルド人であることを理由とした暴言やネット上の中傷などについて安田氏が取材事例を紹介したとされています。

一方、地域の外国人住民をめぐっては、在留制度、地域生活上の摩擦、犯罪・迷惑行為をめぐる情報など、異なる論点が混在しやすいことにも注意が必要です。

個人の具体的な行為を批判することと、

民族・国籍という属性を理由に集団全体を危険視したり、地域からの排除を求めたりすること

は区別する必要があります。

3.法律上の「ヘイトスピーチ」とは

日本では2016年6月、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」が施行されました。

一般に「ヘイトスピーチ解消法」と呼ばれます。

同法第2条は、国外の国・地域の出身者やその子孫で適法に居住する人に対し、外国にルーツがあることを理由として、生命・身体などへ危害を加える旨を告知したり、著しく侮辱したりして、地域社会から排除することを煽動する差別的言動を定義しています。

法務省も「ヘイトスピーチ、許さない。」という啓発事業を継続しています。

4.2026年で施行10年

ヘイトスピーチ解消法は2026年6月に施行10年を迎えました。

法務省も10年を機に啓発コラムなどを公表しています。

法律成立の重要な意義の一つは、国が、

「こうした不当な差別的言動はあってはならない」

と法律上明示したことです。

国には相談体制、教育、啓発などの施策を実施する責務があり、自治体にも地域の実情に応じた取組が求められています。

5.解消法自体には直接の刑罰規定がない

一方、ヘイトスピーチ解消法そのものには、該当する発言をしただけで処罰する直接の刑罰規定は設けられていません。

この点についてHRNのイベントでも、現在の制度の実効性や追加的な法制度の必要性について安田氏の見解が示されました。

ただし、

「刑罰規定がない」=「何を言っても法的責任を負わない」

という意味ではありません。

具体的な行為によっては、脅迫、名誉毀損、侮辱など他の法律上の問題になったり、民事上の損害賠償責任などが生じたりする可能性があります。

6.SNSで何が変わったのか

HRNの報告では、SNSのアルゴリズムによって刺激的な情報や差別的な物語が広がりやすいとの安田氏の分析も紹介されています。

ネット社会では、

短い動画だけが切り取られる。

別の時期・地域の事件が混同される。

一人の行為が集団全体の特徴として語られる。

訂正情報より刺激的な情報の方が広がる。

といった問題が起こり得ます。

これは外国人問題に限りません。

正確な一次情報へアクセスし、個人の行為と属性を切り分けて判断することが重要です。

7.「差別への反対」と「事実の検証」は両立する

ヘイトスピーチを議論すると、しばしば二つの問題が混同されます。

外国人住民に関する具体的な政策や社会問題を議論すること。

民族や国籍を理由として人そのものを排除すること。

前者は公共政策として議論されるべき問題です。

犯罪、在留制度、教育、地域ルール、社会保障などについて、事実に基づいて議論すること自体はヘイトスピーチではありません。

一方、特定の個人による問題を民族集団全体へ一般化し、

「○○人だから危険だ」

「○○人を追い出せ」

などと属性だけを理由に排除へ結びつけることは別の問題です。

冷静な公共的議論を守るためにも、この線引きが重要です。

出典

ヒューマンライツ・ナウ「【イベント報告】差別と偏見の現場を取材して~ヘイトスピーチを許さないために」
https://hrn.or.jp/hokoku/29503/

e-Gov法令検索「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」
https://laws.e-gov.go.jp/law/428AC0100000068

法務省「ヘイトスピーチ、許さない。」
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00108

法務省「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00050.html

法務省「ヘイトスピーチ解消に関連したコラムについて」
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken05_00005.html

関連用語

ヘイトスピーチ
特定の民族や国籍などを理由として、人々を排除したり著しく侮辱したりする差別的言動を指して用いられる言葉。

ヘイトスピーチ解消法
2016年施行。外国にルーツを持ち日本に適法に居住する人々に対する不当な差別的言動の解消を目的とする。
https://laws.e-gov.go.jp/law/428AC0100000068

排外主義
外国人や特定の民族などを社会から排除しようとする考えや運動を指す。

確証バイアス
自分がすでに持っている考えに合う情報を重視し、それと矛盾する情報を軽視する傾向。

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人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、裁判所、企業、公益団体、国際機関などが公表する一次情報を確認し、差別、子ども、障害者、高齢者、教育、福祉、司法・制度、外国人、ビジネスと人権などに関するニュース、制度解説、独自調査を発信しています。記事では出典を明示し、事実関係を確認したうえで、関連する法制度や統計、過去の経緯などを参照しながら、人権上の論点や社会的背景を整理しています。

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