1.三重県は11月17日、桑名市でカスタマーハラスメントと企業の人権対応をテーマとする研修を開催する。
2.2026年10月1日の法改正施行により、すべての事業主にカスタマーハラスメント防止措置が義務付けられた。
3.従業員の保護だけでなく、正当な苦情や障害者への合理的配慮との区別を明確にすることが課題となる。
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義務化直後に開催する企業向け人権研修
三重県は2026年11月17日、桑名市の三重県桑名庁舎で、令和8年度北勢地域人権啓発セミナーを開催する。テーマは「ハラスメントと人権~企業に求められるカスタマーハラスメントへの対応~」。高原社会保険労務士事務所の高原祥子氏が講師を務め、午後2時から4時まで実施する。
定員は先着約40人、参加費は無料。申し込み期限は11月6日で、手話通訳や要約筆記を希望する場合は10月23日までに申し込む必要がある。
この研修は、三重県の建設工事や測量・設計業務の総合評価方式における人権研修受講実績の対象にもなる。
2026年10月から企業に新たな法的義務
2025年に成立した改正労働施策総合推進法等が2026年10月1日に施行され、カスタマーハラスメントの防止措置が事業主の義務となった。
厚生労働省は、カスタマーハラスメントを判断する要素として、顧客等の言動であること、社会通念上許容される範囲を超えること、労働者の就業環境が害されることを挙げている。
例えば、長時間にわたる拘束、人格を否定する暴言、威圧的な要求、従業員へのSNS上の攻撃などが該当する場合がある。
ただし、強い苦情があったという事実だけで、カスタマーハラスメントが成立するわけではない。要求内容の妥当性と、その要求を実現するための手段や態様を区別して考える必要がある。
現場任せにしない企業の対応
企業が実施すべき対策には、カスハラを許容しない方針の明確化、相談体制の整備、被害が発生した場合の対応、従業員への周知・研修などがある。
従業員が暴言を受けても、上司が「接客業だから仕方がない」として対応しなければ、被害者は申告しにくくなる。
企業が顧客との関係を重視するあまり、従業員に過度な謝罪や不当な要求への対応を強いる場合には、企業自身の安全配慮の問題にもつながる。
従業員が一人で判断しなくてよいように、対応を中止する基準、管理職への報告経路、警察への連絡が必要となる場面などを整理することが重要となる。
相談窓口が存在していても、相談した従業員が人事評価や異動への影響を恐れて利用できない場合には、制度が実際に機能しているとはいえない。
正当な苦情と不当な要求を分ける
顧客からの苦情は、企業のサービス改善につながる場合がある。
商品に欠陥があった場合、購入者が説明や交換、返金などを求めることには正当性がある。こうした行為を一律にカスタマーハラスメントとして扱えば、消費者の正当な権利行使を妨げることになる。
反対に、企業側に不備があったとしても、顧客による暴行や脅迫が正当化されるわけではない。
企業に責任があるかどうかと、顧客の行為が社会通念上許容される範囲を超えているかは別の問題である。
カスハラ防止の社内方針を設ける際には、従業員の安全を守ることと、顧客からの正当な申出に適切に対応することの両立が必要となる。
障害者への合理的配慮との関係
カスタマーハラスメント対策では、障害のある顧客への対応に注意が必要となる。
2024年4月から、改正障害者差別解消法に基づき、民間事業者にも合理的配慮の提供が義務付けられている。
例えば、聴覚障害のある顧客が筆談を希望したり、知的障害のある顧客が分かりやすい説明を繰り返し求めたりする場合がある。
通常の対応より時間がかかるという理由だけで、こうした依頼をカスタマーハラスメントと判断することは適切ではない。
ただし、合理的配慮の提供義務があることは、従業員への暴力や脅迫を容認することを意味しない。障害者差別解消法上の義務と、労働者の安全を守る義務を、それぞれ適切に履行する必要がある。
公共調達と人権研修の関係
今回のセミナーは、建設工事や測量・設計業務の総合評価方式における人権研修受講実績の対象となる。
公共調達に関連して人権研修を評価する仕組みは、企業が研修を実施する動機付けとなる。しかし、研修を受けたことだけで、職場の問題が解消されたと評価することはできない。
研修後に社内規程を改定したか、従業員が安心して相談できるか、カスハラ発生後の対応が適切だったかなど、実際の改善状況を確認する必要がある。
三重県「令和8年度北勢地域人権啓発セミナー(桑名庁舎)を開催します」 URL:https://www.pref.mie.lg.jp/TOPICS/m0005100097.htm
厚生労働省「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されました!」 URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/web_magazine/closeup/63.html
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」 URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html

