奈良県の児童虐待相談1682件 支援対象6816人、保護の過程にも子どもの権利

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この記事のポイント

1.2025年度の児童虐待相談対応件数は、奈良県内の児童相談所で1,682件、39市町村で3,082件だった。
2.児童相談所や市町村が支援・見守りの対象として進行管理した児童は6,816人で、相談受理後にも継続支援が必要な子どもが多数いる。
3.虐待から子どもを守ることと、一時保護や親子分離の過程で子どもの意見や手続上の権利を保障することは、同時に考える必要がある。

こどもの人権を守ろう

■相談件数だけでは見えない6816人

奈良県が2026年9月30日に公表した2025年度の児童虐待相談対応件数は、児童相談所で1,682件だった。内訳は県児童相談所1,353件、奈良市児童相談所329件。39市町村では3,082件に対応した。児童相談所の件数は前年度から42件、2.4%減り、市町村も74件、2.3%減った。ただし、児童相談所と市町村が同じ事案に対応する場合があるため、両者を単純に足して県内の虐待件数や被害児童数とすることはできない。

別に見るべき数字がある。児童相談所または市町村が「支援や見守りが必要」と判断して進行管理した児童は6,816人だった。内訳は心理的虐待2,885人、ネグレクト2,391人、身体的虐待1,456人、性的虐待84人で、「虐待を受けた児童」だけでなく「虐待を受けるおそれがある児童」も含む。相談を受けて安全を確認した後も、家庭環境や子どもの状態を継続して見守る必要がある規模を示す数字である。

■保護する側が決めればよいわけではない

児童虐待では、子どもの生命や身体を守るため、行政が家庭へ強く介入しなければならない場合がある。しかし、人権保障は「危険な家庭から離せば終わり」ではない。一時保護は子どもの安全を確保する措置であると同時に、住む場所、学校生活、家族との接触などを大きく変える。保護を必要とする局面でも、子ども本人を単なる保護対象ではなく、権利主体として扱う必要がある。

このため、2025年6月1日には一時保護時の司法審査制度が施行された。親権者などの同意がある場合などを除き、一定の場合には一時保護状を裁判官へ請求する仕組みが導入されている。児童の権利に関する条約第12条も、子どもに影響を及ぼす司法上・行政上の手続で意見を聴く機会を保障している。安全確保のために強い公的権限を使う場面だからこそ、必要性を外部から点検し、本人の声を手続に入れる意味がある。

■件数減少をそのまま「改善」と読まない

奈良県は、対応件数がわずかに減った背景について、こども家庭センターの設置や訪問支援型の家庭支援事業の充実が影響した可能性を推察している。ただし、相談件数は行政が把握した件数であり、家庭内に存在する虐待の総量を直接示すものではない。子ども自身が虐待だと認識できない、周囲が異変に気付かない、通告後に事案として扱われないといった場合は統計の外側に残る。

施策を評価するなら、相談件数だけでなく、虐待の再発、一時保護中の生活・学習環境、家庭復帰後の状況、子どもの意見がどのように聴かれたかまで見る必要がある。奈良県の6,816人という進行管理対象児童数は、児童虐待対策が「通告を受ける制度」だけではなく、その後の生活を継続して支える制度であることを示している。

出典

奈良県「令和7年度の奈良県における児童虐待の状況」
URL:https://www.pref.nara.lg.jp/n055/p087015.html

こども家庭庁「『一時保護時の司法審査』制度の施行に係るQ&A」
URL:https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/6cdc3da2-ca5d-4fd3-8b4f-a4ae1b33cc2b/f88a1754/20250228_councils_Judicial-Review-Working-Team-on-Temporary-Protection_11.pdf

外務省「児童の権利に関する条約 全文」
URL:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jido/zenbun.html?banner_id=5417

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人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、裁判所、企業、公益団体、国際機関などが公表する一次情報を確認し、差別、子ども、障害者、高齢者、教育、福祉、司法・制度、外国人、ビジネスと人権などに関するニュース、制度解説、独自調査を発信しています。記事では出典を明示し、事実関係を確認したうえで、関連する法制度や統計、過去の経緯などを参照しながら、人権上の論点や社会的背景を整理しています。

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