国連人権理事会の第61会期が、2026年2月23日に開幕し、3月31日に閉幕した。反差別国際運動(IMADR)によると、同会期では計38本の決議が採択され、障害者、マイノリティ、適切な住居、路上生活者、ミャンマー情勢など、国際社会が直面する幅広い人権課題が取り上げられた。国連人権理事会は、各国の人権状況や個別課題を審議し、国際基準の形成や各国への政策的要請を行う場であり、採択決議は各国政府や市民社会の取組に影響を与える。
障害者に関する決議では、デジタル技術、交通、住宅を含むインフラへのアクセスが重要な論点とされた。特に、障害のある女性や少女、先住民族、アフリカ系の人々、移民、難民など、複数の差別要因が重なる人々が、社会参加においてより大きな困難に直面していることが示された。各国には、障害者本人や当事者団体との協議を踏まえた意思決定、障害者包摂的なインフラ整備、住宅分野における差別禁止などが求められている。これは、障害者施策を福祉の枠内に閉じず、都市計画、交通政策、デジタル化、住宅政策に組み込む必要性を示すものといえる。
民族的、宗教的、言語的マイノリティに関する決議では、差別、経済的周縁化、ヘイトスピーチ、アイデンティティの否定が、暴力や紛争の前兆となり得ることが指摘された。無国籍の防止、マイノリティ言語による教育、文化活動への支援、公共サービスへの平等なアクセス、包括的反差別法の制定・実施などが各国に求められている。人権の観点からは、差別を個別の偏見や暴言にとどめず、教育、国籍、住民登録、公共サービス、社会参加の問題として捉える姿勢が重要である。
住居に関する決議では、住宅価格の高騰や不動産投機、住居の金融化が、貧困状態にある人々、女性、子ども、高齢者、若者、国内避難民、移民、難民、先住民族、障害者などに深刻な影響を与えていることが示された。路上生活者に関する決議でも、ホームレス状態を犯罪視する制度の見直しや、社会保障制度の強化が求められている。住まいは単なる生活手段ではなく、教育、就労、医療、家族生活、地域参加の基盤であり、住居の喪失や不安定化は複数の権利侵害につながる。
また、ミャンマーの人権状況に関する決議では、民間人への攻撃、空爆、民族的・宗教的マイノリティの強制移動、恣意的拘束、拷問、ジェンダーに基づく暴力などへの強い懸念が示された。さらに、拷問、表現の自由、マイノリティ問題、適切な住居、移住者の権利、人権擁護者、レイシズムに関する特別報告者の任期が2028年まで延長され、子どもの売買、性的搾取、性的虐待に関する特別報告者には日本のキハラハント愛氏が任命された。今回の会期は、国際人権基準が障害、移住、住居、紛争、差別禁止を横断的に扱う方向へ進んでいることを示しており、日本においても、自治体施策、企業活動、教育、福祉、入管・難民政策を検討する際の参照軸となる。
反差別国際運動(IMADR)
URL:https://imadr.net/hrc61closing/

