公益財団法人笹川保健財団は、2026年2月にインドネシア・マカッサルで開催した「笹川ハンセン病イニシアチブ ヤングスカラープログラム」国際ワークショップの内容を紹介した。ワークショップには、インド、インドネシア、コロンビア、バングラデシュの4カ国から、ハンセン病当事者の若者であるスカラーや支援役のメンターら約40名が参加した。5日間にわたり、活動報告、今後の計画発表、当事者団体の現場視察、ピアカウンセリング活動の見学などが行われた。
ハンセン病は治療法が確立されている一方、世界各地では、治療後も就労、結婚、教育、地域生活などで偏見や差別を受ける人が少なくない。ヤングスカラープログラムは、18歳から35歳の当事者を対象に、ハンセン病に関する正しい知識、リーダーシップ、スピーチ、職業訓練などを提供し、当事者コミュニティを支える次世代の担い手を育てる取組である。単なる奨学金や研修ではなく、差別を受けてきた経験を社会を変える力に転換するエンパワメント施策として位置づけられる。
今回のワークショップでは、インドネシア最大級のハンセン病当事者団体「ペルマタ」の活動現場や地域の保健局を訪問し、行政への働きかけや患者・回復者への支援の実際を学んだ。発症後に自信を失っていた参加者が人前でスピーチを行うようになった事例や、バングラデシュの参加者が地域医療を学び、将来は地元でハンセン病回復者やコミュニティに貢献することを目指す事例も紹介されている。国や言語が異なっても、偏見や後遺症、教育機会、家族の理解、経済的自立といった課題には共通点が多い。
人権の観点から重要なのは、当事者を保護や支援の対象としてだけでなく、地域社会を変える主体として位置づけている点である。ハンセン病をめぐる差別は、医療だけで解決するものではなく、教育、就労、家族関係、貧困、地域参加と深く結び付いている。当事者自身が経験を語り、同じ立場の人を支え、行政や地域社会に働きかけることは、差別解消を外部からの啓発に依存しない持続的な取組へと変えていく可能性を持つ。
笹川保健財団は、将来的に同プログラムをブラジルやアフリカなどにも広げ、10年間で100人以上のスカラー輩出を目指すとしている。日本でも、かつての隔離政策により、患者・元患者とその家族が長く偏見や排除にさらされてきた歴史がある。今回の国際ワークショップは、ハンセン病差別を過去の問題としてではなく、今も世界各地で続く生活上の人権課題として捉え直す機会となる。国際協力や人権教育においても、当事者の声を中心に据え、若い世代の参加と連帯を支える視点が求められる。
笹川保健財団
URL:https://www.shf.or.jp/information/27610
