1.松山市教育委員会は、市立小学校で2025年10月に起きた事案を「不登校重大事態」と認定した調査報告書概要版を公表した。
2.学校はいじめ認知後に児童への聴き取りなどを進めた一方、学習支援や謝罪方法、保護者への説明などについて報告書が改善点を指摘した。
3.文部科学省の2024年度調査では全国のいじめ重大事態は1,405件と過去最多。重大事態では事実調査だけでなく、被害児童生徒の学びと生活への継続支援も課題となる。

2025年10月の行為から不登校重大事態へ
松山市教育委員会は9月28日、市立小学校で発生したいじめ重大事態について、調査報告書の概要版を公表した。2025年10月21日、複数の児童が別の児童の名前を使って虚偽の手紙を作成し、対象児童を近所の公園へ呼び出そうとした。対象児童の母親が手紙に違和感を持って確認し、事実が判明した。その後、対象児童は登校できない状態となり、同年12月、松山市教育委員会は、いじめ防止対策推進法第28条第1項第2号に基づく「不登校重大事態」として対応した。
同法第28条は、いじめによって生命、心身、財産に重大な被害が生じた疑いがある場合と、相当期間の欠席を余儀なくされている疑いがある場合について、学校または学校設置者に事実関係を明確にする調査を義務付けている。松山市は、事案の内容や重大性、被害児童・保護者の意向、公表による児童への影響などを踏まえ、概要版を2027年3月27日まで掲載する。
「いじめを認知した後」の対応も検証
報告書によると、学校は事案把握の翌日以降、関係児童への聴き取りや校内での情報共有を行い、本件をいじめと認知した。校内のいじめ防止対策委員会を開き、関係児童と保護者への指導、学級アンケートなども実施している。
しかし、その後の支援では複数の問題が記録された。保護者が依頼した学習プリントが届かなかったり、同じ課題が送られたりしたほか、学校からの手紙が不登校開始から2週間以上後に届いた。謝罪の進め方をめぐって学校と保護者の認識が合わず、教育委員会が同意していない内容を学校が同意済みであるかのように説明したこと、転校先への情報提供で保護者への確認が十分でなかったことも報告書に記載された。報告書は、対象児童の心理状態や保護者の心情をより丁寧に把握し、支援する必要があったと整理している。
学習機会の確保と再発防止
対象児童は松山市教育支援センターの「松山わかあゆ教室」に通い、学習機会を確保した。その後、2026年2月末に市外へ転居し、報告書によれば転校先の小学校では落ち着いた学校生活を送ることができたという。
松山市教育委員会は2026年1月の生徒指導主事研修会で重大事態発生時の初期対応と児童・保護者への対応を扱い、4月の校長研修会でもガイドラインに基づく対応を市内小中学校長に指導した。学校側も外部講師による教職員研修、複数教員による見守り、相談環境の整備、家庭との連携、PTA総会などを通じた相談窓口の周知を再発防止策として掲げている。
全国では、文部科学省の2024年度調査でいじめの認知件数が約76万9,000件、重大事態が1,405件となり、いずれも過去最多だった。重大事態の調査は原因を確定するだけの手続ではなく、被害児童生徒への支援と同種事案の再発防止に利用する制度でもある。松山市の今回の公表は、いじめ行為そのものに加え、事案認知後の学習保障、説明、保護者との連携まで検証対象になることを示している。
松山市「松山市立小学校いじめ重大事態調査報告書の公表について」
https://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/kosodate/gakkokyoiku/ijimejyudaijian.html
松山市教育委員会「松山市立小学校 いじめ重大事態調査報告書 概要版」
https://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/kosodate/gakkokyoiku/ijimejyudaijian.files/ijimejudai08928.pdf
文部科学省「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422178_00006.htm

