1.江戸川区教育委員会は10月13日、区立中学校のいじめ重大事態に関する調査結果を公表した。
2.学校は初期の組織的な事実確認が不十分で、教育委員会への報告は対象生徒の欠席開始から5か月近く経過していた。
3.区教委も重大事態に該当するかを検討しておらず、被害生徒の学習機会や心理的安全を守る対応について問題が指摘された。

2018年度のいじめと2020年度の苦痛を認定
東京都江戸川区教育委員会は2026年10月13日、区立中学校で発生したいじめ重大事態の調査報告書概要版を公表した。調査は区の子どもの権利擁護委員5人で構成された組織が実施し、弁護士4人と公認心理師1人が参加した。調査期間は2024年7月16日から2026年3月19日までだった。
調査組織は、2018年度に同じ部活動に所属した生徒Aから対象生徒に対し「死ね」「うざい」といった発言があったことなどを認定した。2020年度の卒業遠足の準備に関わる人間関係でも、対象生徒が心身の苦痛を感じたと認めている。対象生徒は30日以上欠席し、保護者はいじめが欠席の原因であると学校に伝えていた。調査組織は、遅くとも保護者から申告を受けた時点で重大事態が発生していたと判断した。
学校は組織的な事実確認を進めず
報告書は、学校が最初の申告を受けた際、複数の教職員による組織的対応を十分に行わなかったと指摘する。関係生徒からの事情聴取は限定的で、いじめの背景や人間関係、行為の経緯を詳しく確認せず、生徒Aが否定しなかったことをもって確認を終えていた。
対象生徒の欠席が続いた後も対応は進まず、教育委員会への報告は欠席開始から5か月近く経過していた。管理職の交代時には、いじめの全容が把握されないまま「いじめが終了した」との不正確な情報が引き継がれた。調査や記録が不十分だったことが、その後の支援方針を考えるうえでも障壁になった。
教育委員会にも重大事態判断の不備
区教委は学校から報告を受けても、調査内容の詳細を確認せず、重大事態に該当するかどうかの検討や調査の指示を行っていなかった。いじめによる不登校に特化した支援についても十分に指導していなかった。
いじめ防止対策推進法第28条は、生命、心身、財産への重大な被害が疑われる場合や、いじめにより相当の期間欠席を余儀なくされている疑いがある場合に、学校または設置者が重大事態調査を行う制度を定めている。不登校重大事態では30日の欠席が目安となるが、30日経過するまで事実確認や支援を始めなくてよいという制度ではない。
今回の江戸川区の事案では、いじめに関する情報が学校から教育委員会へ十分に共有されず、共有された後も判断につながっていなかった。学校だけでなく設置者の監督機能が働かなかったことを、調査報告書が明示している。
不登校中の学習機会も問題に
報告書は、進級時の教科書の受け渡しが遅れたことや、成績について学校内と保護者の間で十分な認識のすり合わせができなかったことも指摘した。さらに学校は、生徒Aに学校配布物を対象生徒へ届けさせており、調査組織は、その適切性や教育上の効果が整理されていなかったと判断した。
いじめによって登校できなくなっても、教材の提供、学習評価、進路に関する情報、学校との連絡などの機会は保障されなければならない。被害を訴えている生徒に配布物を届けさせる方法についても、対象生徒の心理的な安全を考慮した判断が必要になる。
調査組織は、いじめ防止対策推進法や国の基本方針への理解を徹底し、子どもが意見を表明できる場を設け、その意見を尊重することなどを提言した。江戸川区教育委員会は研修の強化と迅速な対応体制の構築を表明している。今後は報告の期限や情報共有の方法、重大事態の判断手順、欠席中の学習支援をどう変更したかが、再発防止の効果を検証するうえでの具体的な課題となる。
江戸川区「2026年10月13日 いじめ重大事態調査結果の公表」 URL:https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e004/kuseijoho/kohokocho/press/2026/10/1013.html
江戸川区教育委員会「区立中学校のいじめの重大事態に係る調査結果報告書(概要版)」 URL:https://www.city.edogawa.tokyo.jp/documents/60684/r081013ijime.pdf
江戸川区教育委員会「いじめの重大事態に係る調査結果」 URL:https://www.city.edogawa.tokyo.jp/e072/kosodate/kyoiku/kyouiku/shiryo/keikaku/ijimehoukoku.html
文部科学省「いじめの重大事態の調査に関するガイドラインの改訂について」 URL:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1400142_00006.htm

