1.部落解放同盟和歌山県連、和歌山県、和歌山県宅地建物取引業協会が7月16日、土地取引に関係する差別防止をめぐり意見交換した。
2.三者協議は2012年に県宅建協会員による土地差別調査が判明したことを契機に毎年続けられている。
3.和歌山県は「同和地区か」との問い合わせに回答しなくても宅地建物取引業法第47条違反にはならないと明示し、不動産業者に毅然とした対応を求めている。

2012年の土地差別調査を契機に毎年開催
部落解放同盟和歌山県連、和歌山県、和歌山県宅地建物取引業協会は7月16日、和歌山市内で三者意見交換会を開いた。部落解放同盟中央本部によると、県は宅建協会員向けアンケートから見える課題や取組、協会は会員への啓発・人権研修、県連は差別事案や土地取引をめぐる問題について説明した。BLL
三者による協議は、2012年に県宅建協会員だった事業者による土地差別調査が判明したことを契機として毎年行われているという。単発の研修ではなく、行政、業界、当事者団体が継続的に情報を共有する仕組みとなっている。
和歌山県は具体的な質問例まで公表
和歌山県は宅地建物取引業者向けページで、同和地区、外国人、高齢者、障害のある人、ひとり親家庭などへの偏見を不動産取引へ持ち込まないよう明確に説明している。特に「この物件は同和地区にあるのか」「同和地区であることをなぜ教えてくれなかったのか」といった顧客からの問い合わせを具体例として示している。和歌山県ホームページ Wakayama Prefecture Web Site
県は、顧客の意向だからという理由で同和地区かどうかを調べたり教えたりすることは差別を助長すると説明している。外国人、障害者、高齢者などについても、属性のみを理由として入居を断ることは人権上の問題になるとする。
宅建業法47条は「同和地区を説明する義務」ではない
不動産業者にとって実務上重要なのが、宅地建物取引業法との関係である。和歌山県は公式ページで、取引相手から同和地区に関する質問を受けた際、回答しなかったとしても宅地建物取引業法第47条違反には該当しないとの考え方を示している。県は同和地区への問い合わせについて回答すること自体を差別行為として整理し、業者に「答える必要はない」と明示している。和歌山県ホームページ Wakayama Prefecture Web Site
これは実務上大きい。通常の不動産取引では、災害リスク、用途地域、建築規制、道路、周辺施設など、契約判断に必要な情報を調査・説明する。しかし、「住民の出身」「被差別部落との関係」といった属性情報を同じような物件情報として扱うことはできない。
差別する顧客の「代理人」にならない
土地差別調査では、業者自身に強い差別意識がなくても問題が生じ得る。「買主に頼まれた」「家主の希望だった」「トラブルを避けるため確認した」という形で、事業者が顧客の差別的要求を代行してしまう場合があるからだ。
この構造は、企業による差別防止を考えるうえで重要である。従業員に「差別をしてはいけない」と教えるだけでは足りず、顧客から差別的な依頼を受けた場合に断るルールを用意する必要がある。問い合わせを記録するのか、管理職へ報告するのか、業界団体や県に相談するのかまで決めておけば、担当者が営業上の圧力を一人で背負わずに済む。
研修の実施回数だけでは測れない
和歌山県は宅建業者に対する人権問題の実態調査も行っている。三者協議を評価する際には、研修を何回開いたかだけでなく、「同和地区か」と尋ねる顧客がどの程度存在するのか、入居拒否の依頼がどのように処理されているのか、差別的な問い合わせを受けた従業員が適切に断れるようになったかを継続的に確認する必要がある。
2012年の土地差別調査から14年が経過した2026年も、和歌山県、県宅地建物取引業協会、部落解放同盟県連が協議を続けている。土地差別を減らすには、個人の意識啓発とともに、不動産取引の現場で「調べない、伝えない、差別的な依頼を引き受けない」という実務を組織として定着させられるかが問われる。
部落解放同盟中央本部「差別のない取引へ 現状と対応訴え~県・協会と意見交換」
URL:https://www.bll.gr.jp/info/news2026/news20261005-6.html
和歌山県「宅地建物取引業(宅地建物取引業と人権)」
URL:https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/080800/d00154666.html
和歌山県「宅地建物取引業関係」
URL:https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/080800/d00154664.html
