1.川崎市が「ライブドアブログ」に掲載された9事案を、本邦外出身者に対する不当な差別的言動に該当すると認定した。
2.市は「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」17条に基づき、9月30日に運営会社へ削除を要請した。
3.差別表現を認定するだけでなく、ネット上での拡散防止まで行政措置の対象としている点に川崎市制度の特徴がある。

ライブドアブログの9事案を認定
川崎市は10月1日、「ライブドアブログ」に掲載された9事案について、「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」17条1項に基づき、本邦外出身者に対する不当な差別的言動に該当すると公表した。対象となったのは特定の市民らに向けられた投稿で、日本国外の国や地域の出身であることを理由に、国外への排斥を促す表現、民族を蔑視する表現、人を人間以外のものに例えて侮辱する表現などが含まれていた。市は9月30日、ブログを運営する株式会社ライブドアに9事案の削除を要請した。
国の法律とは異なる「拡散防止」の仕組み
2016年施行のヘイトスピーチ解消法は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消を基本理念として掲げ、国や地方公共団体による相談体制、教育、啓発などを定めた。一方、同法自体にヘイトスピーチを理由とする刑事罰は設けられていない。川崎市条例17条は、インターネット上の表現活動が一定の要件を満たす場合、市が「表現の内容の拡散を防止するために必要な措置」を講じ、その概要を公表できる仕組みを設けている。国法の理念を、ネット上の具体的な投稿への行政対応につなげた制度と整理できる。
今回が条例17条の初適用というわけでもない。川崎市は2026年2月にも同条に基づくインターネット上の差別的言動への措置を公表している。個別投稿を認定し、サイト運営者などへ削除を働きかける運用が継続している点は、単発の啓発事業とは異なる。
公表が差別表現の再拡散にならないために
市の資料では、問題となった投稿の内容を説明しながらも、差別語の一部を伏せている。行政判断の根拠を市民に示す必要がある一方、公表資料そのものによって差別表現が再生産・再拡散されることを避ける必要があるためだ。市は、公表されなかった表現が条例上の不当な差別的言動に該当しないという意味ではないことも明記した。これは、公表事例だけを境界線として模倣的な投稿が生まれることを防ぐ上でも重要な説明となっている。
削除要請後まで追えるか
行政が投稿を認定して公表することと、ネット上から実際に情報が消えることは同じではない。今回の発表時点では、株式会社ライブドアが9事案を削除したか、同一内容が他のブログやSNSへ転載されているかまでは示されていない。ネット上の差別による被害を考える場合、認定件数だけでなく、削除要請後の残存状況や再投稿も制度の実効性を測る材料になる。川崎市条例17条の運用では、行政による認定、公表、削除要請が実際の拡散抑制にどこまでつながったかまで継続して確認する余地がある。
川崎市「インターネット表現活動が本邦外出身者に対する不当な差別的言動に該当する旨等の公表について」
URL: https://www.city.kawasaki.jp/templates/prs/250/0000189915.html
川崎市「インターネット表現活動が本邦外出身者に対する不当な差別的言動に該当する旨等の公表」
URL: https://www.city.kawasaki.jp/250/page/0000121883.html
ヘイトスピーチ解消法
URL: https://jinken-news.com/glossary/hate-speech-kaisho-hou/
ヘイトスピーチ
URL: https://jinken-news.com/glossary/hate-speech/
インターネットと人権
URL: https://jinken-news.com/glossary/internet-and-human-rights/

