障害者雇用促進法とは、正式には「障害者の雇用の促進等に関する法律」といい、障害のある人の職業生活における自立を促し、雇用の安定を図るための法律です。事業主に対し、障害者でない人との均等な機会の確保、障害を理由とする差別の禁止、合理的配慮の提供、法定雇用率に基づく雇用義務などを定めています。障害者差別解消法が行政機関や事業者による社会生活上の差別を広く扱うのに対し、障害者雇用促進法は、雇用・労働の場面を中心に障害者の権利を支える法律です。
1.障害者雇用促進法の意味
障害者雇用促進法は、障害のある人が働く機会を得て、職場で能力を発揮しながら働き続けるための制度を定めた法律です。対象となる障害者には、身体障害、知的障害、精神障害などがある人が含まれます。
この法律は、障害者を「福祉の対象」としてだけでなく、職業生活の主体として扱う点に意味があります。働くことは、収入を得る手段であると同時に、社会参加、自己実現、人との関係づくりにも関わります。障害があることを理由に採用の機会から排除されたり、職場で不利な扱いを受けたりすれば、生活の自立や社会参加が制限されます。
障害者雇用促進法は、事業主に対し、募集・採用、賃金、配置、昇進、教育訓練、福利厚生などの雇用場面で、障害を理由とする差別的取扱いを禁止しています。あわせて、障害のある労働者が働くうえで支障となる事情を改善するため、過重な負担にならない範囲で合理的配慮を提供することも求めています。
2.制度・法律との関係
障害者雇用促進法の中心的な仕組みの一つが、障害者雇用率制度です。一定規模以上の事業主は、常用労働者数に応じて、法定雇用率以上の障害者を雇用する義務があります。民間企業の法定雇用率は令和6年4月から2.5%となっており、令和8年7月からは2.7%に引き上げられます。
障害者雇用率制度には、障害者雇用納付金制度も関係します。法定雇用率を満たさない事業主から納付金を徴収し、その財源を用いて、障害者を多く雇用する事業主への調整金や、職場環境整備などへの助成を行う仕組みです。雇用義務を単なる努力目標にせず、企業の雇用行動を制度的に促す役割を持っています。
雇用分野の合理的配慮も重要です。たとえば、車いす利用者のために職場の動線を確保する、聴覚障害のある人に文字情報や手話通訳を用意する、精神障害や発達障害のある人について業務指示の出し方や休憩の取り方を調整する、といった対応が考えられます。合理的配慮の内容は、本人の障害特性、職務内容、職場環境、事業主の負担などを踏まえて個別に検討されます。
障害者雇用促進法は、障害者基本法、障害者差別解消法、障害者総合支援法、労働関係法令とも関係します。就職前の職業訓練、就職活動、採用後の職場定着、休職・復職、解雇、ハラスメント、賃金、合理的配慮など、障害者の働く場面では複数の制度が重なって問題になります。
3.人権上の論点
障害者雇用促進法の人権上の論点は、障害のある人が働く機会から排除されず、職場で尊厳を保ちながら働けるかという点にあります。雇用は生活の基盤であり、所得、社会参加、自己決定に直結します。障害があることを理由に採用段階で不利に扱われたり、本人の能力や希望と関係なく補助的な業務だけを割り当てられたりすれば、形式的に雇用されていても、実質的な参加は制限されます。
法定雇用率を満たすことも大切ですが、それだけで障害者雇用が十分とはいえません。採用人数の達成だけを優先し、本人の希望、職務内容、職場環境、キャリア形成、賃金、相談体制を軽視すれば、雇用の質が伴わないからです。障害者雇用促進法は、人数を確保する制度であると同時に、差別禁止と合理的配慮を通じて働き方の中身を問う法律でもあります。
職場では、障害のある人に対する無理解や偏見が、孤立、退職、体調悪化につながることがあります。事業主、人事担当者、上司、同僚、産業保健スタッフ、ハローワーク、就労支援機関が、本人と対話しながら職務内容や配慮を調整できるかが、障害者雇用促進法の実効性を左右します。障害者雇用促進法という用語は、障害のある人の働く権利を、雇用率だけでなく、差別の禁止、合理的配慮、職場定着の問題として理解するための基本用語です。