1.山梨県は10月を「てんかんを正しく理解する月間」とし、県内施設のライトアップや甲府駅での啓発活動を実施する。
2.県は患者数をおよそ100人に1人とし、適切な治療によって約70~80%の人が発作をコントロールできるとしている。
3.てんかんの人権課題は発作そのものだけでなく、診断名から能力や危険性を一律に判断され、教育・雇用・社会参加の機会を失うことにもある。

■100人に1人、県が偏見解消を掲げる
山梨県は毎年10月を「てんかんを正しく理解する月間」とし、2026年も山梨大学医学部附属病院てんかんセンター、日本てんかん協会山梨県支部と連携して普及啓発を行う。県は、てんかんを全ての年齢層で発症する可能性がある脳の疾患と説明し、患者数はおよそ100人に1人、適切な治療によって約70~80%の人が発作をコントロールできるとしている。10月5日には甲府駅南口広場などで啓発物品を配布する。
県が事業目的に「偏見・誤解の解消」を明記している点は、医療啓発だけではなく人権問題として考える手掛かりになる。本人の生活上の制約が発作そのものから生じているのか、それとも周囲が「てんかんの人は危険」「この仕事は任せられない」と一括して判断した結果なのかを分けて考える必要がある。
■診断名だけで機会を奪わない
世界保健機関(WHO)は、てんかんをめぐるスティグマや差別について、発作そのもの以上に克服が難しい場合があると指摘している。教育機会、特定職業への就業、運転免許、保険などで障壁を経験する例があるとし、偏見が治療を受けること自体をためらわせる場合もあるとしている。
もちろん、発作の状態や仕事内容によって安全上の調整が必要な場面はある。問題は、本人の発作の頻度、治療状況、職務内容を確認せず、病名だけで「できない」と決めることである。個別の状態を見ずに一律の排除へ結び付ければ、病気ではなく社会側の判断が参加機会を狭める。
■「病名を言うか、支援を諦めるか」にしない
てんかんは外見から分からない場合がある。学校や職場で発作時の対応や一定の配慮を受けるには病気について伝えた方がよい場面がある一方、偏見を恐れれば本人は開示をためらう。必要な支援を受けるために病歴の公表を事実上迫られる状態も望ましくない。
この問題は、本人に「正しく病気を説明して理解してもらう責任」を負わせるだけでは解決しない。学校や企業、地域側が、診断名から能力を推測しないこと、必要な情報だけを適切に扱うこと、本人と相談しながら安全策を組み立てることが必要になる。
■ライトアップの先をどう測るか
ライトアップやチラシ配布は理解促進の入口になるが、実施回数だけでは偏見が減ったかは分からない。学校で必要以上の活動制限が起きていないか、就職や職場配置で病名だけの判断がなされていないか、本人が安心して必要な情報を伝えられるかという生活場面まで見なければならない。
山梨県が山梨大学医学部附属病院てんかんセンターと日本てんかん協会山梨県支部を事業に加えていることは、医学的知識と当事者が経験する社会的障壁の双方を伝えられる構成でもある。10月の取組を「病気を知る啓発」で終わらせず、診断名だけで人を判断しない学校・職場・地域へどうつなげるかが、人権施策としての検証点となる。
山梨県「10月は『てんかんを正しく理解する月間』です」
URL: https://www.pref.yamanashi.jp/release/kenko-zsn/0809/tenkangekkan.html
WHO「Epilepsy」
URL:https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/epilepsy

