出入国管理及び難民認定法とは、日本への入国、日本からの出国、外国人の在留管理、退去強制、難民認定手続などを定める法律です。一般には「入管法」とも呼ばれます。人身取引との関係では、外国人被害者が在留資格や退去強制への不安から被害を申告できないことがあるため、被害者保護の観点から在留期間更新、在留資格変更、在留特別許可などの対応が重要になります。人身取引を、入管法違反の問題としてだけでなく、被害者の安全と回復に関わる人権課題として理解するための基本法令です。
1.出入国管理及び難民認定法の意味
出入国管理及び難民認定法は、日本に入国する人、日本から出国する人、日本に在留する外国人について、出入国と在留の管理を定める法律です。難民認定手続もこの法律に含まれます。e-Gov法令検索でも、同法は出入国と外国人の在留の公正な管理、難民認定手続の整備を目的とする法律として掲載されています。
人身取引の文脈では、外国人被害者の保護が重要になります。人身取引の被害者は、加害者や仲介者に旅券を取り上げられたり、在留資格を利用して脅されたり、借金や雇用契約を理由に支配されたりすることがあります。被害者が不法残留や資格外活動の状態に置かれている場合でも、それが本人の自由な意思ではなく、搾取や支配の結果であることがあります。
そのため、人身取引対策では、外国人被害者を最初から処罰や退去の対象として扱うのではなく、被害者である可能性を確認し、安全確保、在留上の対応、帰国支援、生活支援につなげることが必要になります。入管法は、外国人被害者の法的地位を安定させるうえで、人身取引対策と深く関係します。
2.制度・法律との関係
人身取引対策では、2000年代以降、入管法の改正が重要な役割を果たしてきました。政府広報は、人身取引対策行動計画の策定以降、入管法も改正され、人身取引などの被害者が資格外活動・売春関係の退去強制事由から除外されるとともに、上陸特別許可・在留特別許可の対象とされたと説明しています。加えて、人身取引の加害者が上陸拒否事由・退去強制事由に追加されたことも示されています。
出入国在留管理庁は、人身取引被害者の立場を十分考慮し、被害者の希望等を踏まえ、被害者保護の観点から対応すると説明しています。正規在留者の場合には、在留期間の更新や在留資格の変更を許可し、不法残留など入管法違反状態にある場合には、在留特別許可により法的地位の安定化を図るとしています。
上陸の場面でも、人身取引被害者への配慮があります。出入国在留管理庁は、入管法改正の概要の中で、「人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に入った」場合には、上陸を特別に許可することができると説明しています。これは、被害者が加害者の支配下で日本に連れて来られた場合に、形式的な入国要件だけで排除しないための仕組みです。
政府の人身取引対策行動計画2022も、外国人被害者に対し、保護施策の周知と、在留特別許可等の法的手続に関する十分な説明を行うことを掲げています。人身取引対策では、警察による取締り、入管による在留対応、外務省による帰国・社会復帰支援、厚生労働省や福祉機関による生活支援が連携する必要があります。
3.人権上の論点
出入国管理及び難民認定法を人身取引の文脈で考える際の論点は、外国人被害者を「入管法違反者」としてだけ見ないことにあります。人身取引の被害者は、在留資格、借金、雇用主への依存、言語の壁、旅券の取上げ、家族への送金、暴力や脅迫などにより、自由な判断を奪われている場合があります。
被害者が不法残留や資格外活動の状態にある場合でも、その背景に人身取引があるなら、本人を直ちに処罰や退去の対象として扱うことは、被害申告を妨げるおそれがあります。加害者側が「通報すれば強制送還される」と脅すこともあります。被害者が安心して相談できるには、在留上の不安を軽減し、安全な保護につなげる制度運用が必要です。
外国人被害者の支援では、在留資格の問題だけでなく、通訳、医療、心理的ケア、安全な住まい、法的支援、帰国または日本国内での生活再建が関係します。外務省も、人身取引議定書と人身取引対策行動計画に基づき、外国人被害者の帰国・社会復帰支援などを行っていると説明しています。
出入国管理及び難民認定法は、外国人の出入国と在留を管理する法律ですが、人身取引対策では、被害者保護のための重要な制度基盤にもなります。人身取引を理解する際には、入管法を単なる在留管理の法律としてではなく、外国人被害者の安全、法的地位、帰国・生活再建を支える制度としても捉える必要があります。