子どもの代替的養護に関する指針とは、親の養護を受けられない子ども、または親の養護を失うおそれのある子どもについて、家庭支援、里親、養子縁組、施設養護などのあり方を示した国連の指針です。正式には「児童の代替的養護に関する指針」と訳され、2009年12月18日に国連総会決議64/142として採択されました。子どもの権利条約を踏まえ、子どもが家庭的な環境で、安全かつ継続的に育つための国際基準として参照されています。
1.子どもの代替的養護に関する指針の意味
子どもの代替的養護とは、親による養育を受けられない、または親と暮らし続けることが子どもの安全や福祉に反する場合に、家庭や施設などで子どもを養育する仕組みをいいます。里親、ファミリーホーム、親族養育、養子縁組、児童養護施設、乳児院などが関係します。
この指針は、子どもを親から引き離すことを前提にした文書ではありません。むしろ、まず家族が子どもを養育し続けられるよう支援すること、家族から離れている子どもについては家庭復帰を支援すること、それが難しい場合には養子縁組などの永続的な解決を探ることを重視しています。国連総会決議64/142に添付された指針は、親の養護を奪われ、または奪われる危険にさらされている子どもの保護と福祉について、政策と実践の望ましい方向性を示すものです。
重要なのは、子どもの最善の利益と、子ども本人の意見を尊重することです。代替的養護は、大人の都合や施設の空き状況だけで決めるものではありません。きょうだいを分離しないこと、子どもの生活史や地域とのつながりを尊重すること、養育の継続性を確保すること、子どもの年齢や発達に応じて意見を聴くことが重要になります。
2.制度・法律との関係
子どもの代替的養護に関する指針は条約ではありませんが、子どもの権利条約の実施を補う国際基準として位置づけられます。国連総会決議64/142は、この指針を、親の養護を奪われ、または奪われる危険にさらされている子どもの保護と福祉について、政策と実践を方向づける文書として添付しています。
日本では、児童福祉法、里親制度、児童養護施設、乳児院、ファミリーホーム、特別養子縁組、児童相談所、一時保護、社会的養護・社会的養育の制度と関係します。平成28年改正児童福祉法では、子どもが家庭において心身ともに健やかに養育されることを原則とし、家庭での養育が困難な場合には、家庭と同様の養育環境で継続的に養育されるよう必要な措置を講ずる考え方が明記されました。厚生労働省の「新しい社会的養育ビジョン」も、国連の指針を踏まえ、家庭養育の原則や永続的解決の考え方を整理しています。
この指針は、施設養護を否定する文書ではありません。ただし、施設での養育が必要な場合でも、小規模化、地域分散化、家庭的な養育環境、子どもの権利保障、退所後の支援、家族再統合や永続的解決への取組が求められます。日本の社会的養育では、児童養護施設や乳児院の機能転換、里親支援、フォスタリング機関、特別養子縁組支援、アフターケアが制度上の課題になっています。
3.人権上の論点
子どもの代替的養護に関する指針の人権上の論点は、親と暮らせない子どもを「保護の対象」としてだけでなく、権利の主体として扱う点にあります。虐待、貧困、親の病気、障害、孤立、家族関係の破綻などにより家庭から離れる子どもは、生活の場、学校、友人、きょうだい、地域とのつながりを失いやすくなります。代替的養護は、子どもの生活を守る一方で、子どもに大きな環境変化をもたらす制度です。
そのため、子どもをどこで誰が養育するかは、単なる措置や保護の問題ではありません。子どもの意見、年齢、発達、きょうだい関係、文化的背景、障害の有無、トラウマ、親との関係、将来の見通しを含めて判断する必要があります。大人にとって管理しやすい制度ではなく、子どもにとって安定した生活と愛着関係を保障できる制度であるかが問われます。
日本でこの用語を扱う場合、里親委託率や施設定員だけを見るのでは不十分です。親子分離を防ぐための在宅支援、児童相談所の判断、子どもの意見表明支援、家庭復帰支援、特別養子縁組、施設の小規模化、退所後の自立支援までを一体で見る必要があります。子どもの代替的養護に関する指針という用語は、社会的養護を、子どもの最善の利益、家庭養育、永続的解決、意見表明権の問題として理解するための基本用語です。