意思疎通支援とは、聴覚、言語機能、音声機能、視覚、盲ろう、失語、知的障害、発達障害、高次脳機能障害、重度の身体障害、難病などにより、他者とのコミュニケーションに支障がある人を支援することをいいます。手話通訳、要約筆記、代筆・代読、点訳、音声訳、触手話、指点字、会話支援など、障害特性に応じた方法が用いられます。
1.意思疎通支援の意味
意思疎通支援は、障害のある人が情報を受け取ることと、自分の考えや希望を相手に伝えることの両方を支える仕組みです。単に「通訳する」「文字にする」という技術的な支援にとどまらず、本人が社会生活の中で必要な判断や選択に関われるようにする役割を持ちます。
たとえば、聴覚障害のある人には手話通訳や要約筆記、視覚障害のある人には代筆・代読、点訳、音声訳、盲ろう者には触手話や指点字、失語症のある人には会話内容の理解や表現を補助する支援が用いられます。知的障害や発達障害のある人には、分かりやすい表現、図や写真、短い説明、選択肢の整理などが必要になる場合があります。
意思疎通支援で重要なのは、支援者が本人の意思を置き換えないことです。本人が何を理解し、何を望み、どのように伝えたいのかを確認しながら、相手とのやり取りを成立させることが基本になります。支援者や家族が「本人の代わりに決める」形になれば、意思疎通支援ではなく、本人の自己決定を狭める対応になりかねません。
2.制度・法律との関係
意思疎通支援は、障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業と深く関係します。都道府県や市町村では、手話通訳者、要約筆記者、盲ろう者向け通訳・介助員などの派遣や養成を行う事業が実施されています。地域の実情や利用者の状況に応じて、支援の内容や実施方法が組み立てられます。
障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法とも関係します。同法は、障害のある人が必要な情報を取得・利用し、円滑に意思疎通できるようにする施策を進める法律です。意思疎通支援は、この法律が掲げる情報取得とコミュニケーションの保障を、相談、医療、教育、就労、行政手続、災害時対応などの現場で具体化するものといえます。
障害者差別解消法上の合理的配慮として、意思疎通支援が必要になる場面もあります。行政窓口での手話通訳、病院での筆談や分かりやすい説明、学校での要約筆記、職場での文字情報の共有、契約時の代読・代筆などは、障害のある人が他の人と同じように手続やサービスを利用するための調整に当たります。
3.人権上の論点
意思疎通支援の人権上の論点は、コミュニケーションの困難が、本人の意思決定や社会参加の排除につながりやすいことにあります。説明を理解できない、質問できない、希望を伝えられない、同意や拒否を表明できない状態では、医療、福祉、教育、雇用、契約、行政手続で本人抜きの判断が進む危険があります。
特に医療、福祉、災害対応、司法・行政手続では、意思疎通支援の有無が本人の権利に直接関わります。診療内容を理解できないまま同意を求められる、避難情報が伝わらない、相談窓口で被害を説明できない、契約内容を理解できないといった状況は、単なる不便ではなく、生命・身体、財産、自由、生活の安全に関わる問題です。
意思疎通支援は、障害のある人の声を社会の側が受け取るための制度でもあります。手話通訳者、要約筆記者、盲ろう者向け通訳・介助員、失語症者向け意思疎通支援者、相談支援専門員、行政窓口、医療機関、学校、事業者が、本人の意思を確認しやすい方法を整えることで、障害のある人が自分の生活に関わる判断へ参加しやすくなります。