犯罪被害者等基本計画とは、犯罪被害者等基本法に基づき、政府が犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に進めるために定める基本計画です。犯罪被害者等には、犯罪等により害を受けた本人だけでなく、その家族や遺族も含まれます。損害回復、経済的支援、心身の回復、刑事手続への関与、支援体制の整備、国民理解の促進など、犯罪被害者等支援の全体像を示す制度用語です。
1.犯罪被害者等基本計画の意味
犯罪被害者等基本計画は、犯罪被害者等基本法に基づいて政府が策定する、犯罪被害者等施策の基本的な計画です。個別の制度や支援策をばらばらに扱うのではなく、犯罪被害者等が被害後に直面する課題を整理し、国の施策としてどのように進めるかを示します。
犯罪被害は、事件そのものによる生命・身体・財産への被害だけではありません。医療費や生活費の負担、収入の減少、住居の変更、通学や就労への影響、精神的な苦痛、捜査や裁判への対応、周囲の無理解など、被害後の生活全体に及ぶことがあります。基本計画は、こうした被害の広がりを踏まえ、必要な支援を体系的に整理するものです。
現在の第5次犯罪被害者等基本計画は、2026年4月1日から2031年3月31日までを計画期間としています。第1次から第4次までの取組を引き継ぎつつ、犯罪被害者等を取り巻く環境の変化、当事者や支援者からの意見、制度改正の状況を踏まえ、施策を見直す役割を持ちます。
2.制度・法律との関係
犯罪被害者等基本計画の根拠は、犯罪被害者等基本法です。同法は、政府に対し、犯罪被害者等のための施策に関する基本的な計画を定めることを義務付けています。基本計画は、同法の基本理念を具体的な施策に落とし込むための政策文書です。
基本計画では、犯罪被害者等が個人の尊厳にふさわしい処遇を保障されること、被害の状況や生活への影響に応じた支援を受けられること、必要な支援が途切れることなく行われることなどが重視されます。これらは、犯罪被害者等基本法の理念を実務に反映するための考え方です。
施策の柱には、損害回復・経済的支援、精神的・身体的被害の回復と防止、刑事手続等への関与拡充、支援体制の整備、国民の理解の増進と配慮・協力の確保などがあります。犯罪被害給付制度、被害者参加制度、損害賠償命令制度、地方公共団体の相談窓口、民間被害者支援団体との連携なども、基本計画と関係します。
基本計画は、国の各府省庁だけでなく、地方公共団体の施策にも影響します。犯罪被害者等支援条例、見舞金制度、相談窓口、転居支援、学校や職場での配慮などは、地域の実情に応じて整備されます。基本計画は、国と地方公共団体、警察、司法、福祉、医療、教育、雇用、民間団体をつなぐ政策上の基盤になります。
3.人権上の論点
犯罪被害者等基本計画をめぐる人権上の論点は、犯罪被害者等を刑事事件の関係者としてだけでなく、尊厳と生活を持つ権利主体として支えることにあります。被害者や家族、遺族は、事件後も生活を続けなければなりません。医療、住居、仕事、学校、子育て、介護、裁判対応など、日常生活のさまざまな場面で支援が必要になる場合があります。
二次的被害の防止も重要です。被害者や家族が、周囲の無理解、報道、インターネット上の中傷、捜査や裁判の過程での配慮不足などによって、さらに傷つけられることがあります。基本計画は、犯罪そのものによる被害だけでなく、被害後に生じる追加的な負担を減らすための施策とも関係します。
犯罪被害者等支援では、加害者処罰だけでは十分ではありません。損害回復、生活再建、精神的ケア、法的支援、情報提供、手続への付き添い、子どもや家族への支援などが必要になることがあります。基本計画は、こうした支援を一時的な対応にとどめず、被害直後から中長期の生活再建までつなげるための枠組みです。
犯罪被害者等基本計画は、犯罪被害者本人、家族、遺族の権利利益を守るための政策の設計図です。警察庁をはじめとする関係府省庁、地方公共団体、医療機関、福祉機関、学校、職場、民間支援団体が、それぞれの役割を明確にし、被害者等が孤立しない支援体制を整えるための基本用語として理解する必要があります。