拷問等禁止条約とは

拷問等禁止条約とは、正式には「拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約」といい、拷問や残虐な取扱いを防止するための国際人権条約です。1984年に国連総会で採択され、1987年に発効しました。日本は1999年に加入しています。刑事司法、入管収容、被拘禁者処遇、難民・送還、警察・矯正・医療の現場に関わる重要な条約です。

1.拷問等禁止条約の意味

拷問等禁止条約は、国家権力による拷問を明確に禁止し、その防止と処罰を締約国に求める条約です。条約上の「拷問」とは、身体的または精神的な重い苦痛を故意に与える行為で、情報や自白を得ること、処罰すること、脅迫・強要すること、差別に基づく理由などを目的とし、公務員その他の公的資格で行動する者、またはその同意・黙認の下で行われるものをいいます。

この条約が対象とするのは、狭い意味の拷問だけではありません。拷問には至らない場合でも、残虐な、非人道的な、または品位を傷つける取扱い・刑罰を防止することも求めています。被拘禁者、被収容者、難民申請者、移住者、精神科医療や福祉施設の利用者など、自由を制限されやすい立場にある人の処遇を考える際に重要な基準になります。

拷問の禁止は、戦争、内政不安、テロ対策、治安維持などを理由にしても正当化できません。条約は、いかなる例外的な事態も拷問を正当化する根拠として援用できないとしています。上司や公的機関の命令も、拷問を正当化する理由にはなりません。

2.制度・法律との関係

拷問等禁止条約は、締約国に対し、拷問に当たる行為を刑法上の犯罪とすることを求めています。拷問の未遂、共謀、加担についても同様に犯罪とすることが求められます。さらに、拷問を行った疑いのある者について、裁判権の設定、身柄確保、予備調査、訴追または引渡しなどの仕組みを定めています。

条約第3条は、拷問を受けるおそれがあると信じるに足りる実質的な根拠がある国へ、いずれの者も追放、送還、引渡ししてはならないと定めています。この規定は、難民や退去強制、犯罪人引渡しの場面で重要です。ノン・ルフールマン原則と深く関係し、送還先で拷問を受ける危険がある場合には、国家の送還判断そのものが人権問題になります。

条約は、教育・研修、尋問方法や拘禁処遇の点検、迅速かつ公平な調査、申立てを行う権利、被害者の救済と賠償、拷問によって得られた供述を証拠として使わないことなども定めています。拷問等禁止条約は、刑法だけでなく、刑事訴訟、警察実務、入管行政、矯正、医療、福祉、難民認定手続などと関わる条約です。

3.人権上の論点

拷問等禁止条約の人権上の論点は、国家や公的機関が、人の身体と精神に重大な苦痛を与えることを、どのような理由でも許さないという点にあります。拷問は、生命・身体の安全、人格の尊厳、公正な裁判を受ける権利を根底から損ないます。自白や情報を得るためであっても、治安や安全保障を理由にしても、拷問は正当化されません。

特に問題となるのは、外部から見えにくい場所での処遇です。警察留置施設、刑事施設、入管収容施設、精神科病院、福祉施設などでは、本人の自由や情報発信が制限されることがあります。苦情申立てや第三者の監視、記録、医療アクセス、通訳、弁護士や支援者との連絡が不十分であれば、不適切な処遇が表面化しにくくなります。

拷問等禁止条約は、拷問を「してはならない」という禁止規範であると同時に、拷問を防ぐための制度を整えることを求める条約です。国、警察、検察、裁判所、刑事施設、入管当局、医療機関、福祉施設、自治体が、拘束や収容の場面で本人の尊厳と安全を守れるかが問われます。拷問等禁止条約という用語は、被拘禁者や被収容者の処遇を、治安や管理の問題だけでなく、人権保障の問題として理解するための基本用語です。

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