児童買春・児童ポルノ禁止法とは、児童買春、児童ポルノの製造・提供・所持などを規制し、処罰するとともに、被害を受けた児童の保護を定める法律です。正式名称は「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」です。児童に対する性的搾取と性的虐待は、子どもの権利を著しく侵害する行為であり、人身取引や子どもの性被害を考えるうえでも重要な法令です。
1.児童買春・児童ポルノ禁止法の意味
児童買春・児童ポルノ禁止法は、18歳未満の児童を性的搾取から守るための法律です。児童に対価を示して性交等をする児童買春、児童の性的な姿態を描写した児童ポルノの製造・提供・公然陳列・所持などを規制し、処罰対象としています。
この法律が重視しているのは、児童を性的対象として扱うこと自体が、児童の尊厳と発達を傷つけるという点です。児童買春では、金銭や物品、宿泊、食事、交際関係などが、児童を性的行為に誘導する手段になることがあります。児童ポルノでは、画像や動画が一度作成・拡散されると、インターネット上で繰り返し流通し、被害が長期化するおそれがあります。
人身取引との関係では、児童の性的搾取が特に重要です。政府広報は、人身取引について、18歳未満の児童の場合、性的搾取、労働搾取、臓器摘出の目的で支配下に置いたり引き渡したりすれば、金銭の授受や暴力・脅迫・詐欺などの手段がなくても人身取引とみなされると説明しています。
2.制度・法律との関係
児童買春・児童ポルノ禁止法は、児童買春や児童ポルノに関する行為の処罰だけでなく、被害児童の保護も定めています。法律の目的規定では、児童に対する性的搾取・性的虐待が児童の権利を著しく侵害すること、国際的動向を踏まえること、児童の権利を擁護することが明記されています。
この法律は、刑法、児童福祉法、児童虐待防止法、売春防止法、性的姿態撮影等処罰法、出入国管理及び難民認定法などとも関係します。児童の性的搾取は、買春や画像の問題だけでなく、誘拐、監禁、暴行、脅迫、SNSを通じた勧誘、家出児童の取り込み、外国人児童の搾取など、複数の法領域にまたがる場合があります。
政府の人身取引対策でも、この法律は関連法令の一つとして重要です。政府広報は、人身取引に当たる行為は、刑法の略取・誘拐罪や人身売買罪、児童福祉法違反などの犯罪に該当すると説明しており、被害者の多くが社会的・経済的に弱い立場にある女性や子どもであることも示しています。
こども家庭庁は、「児童の性的搾取等に係る対策の基本計画(子供の性被害防止プラン)」について、児童買春、児童ポルノの製造等の子どもの性被害の撲滅に向けて政府が取り組むべき施策を取りまとめたものと説明しています。児童買春・児童ポルノ禁止法は、このような政府全体の子どもの性被害対策の基礎となる法律でもあります。
3.人権上の論点
児童買春・児童ポルノ禁止法をめぐる人権上の論点は、児童を性的搾取の対象にすることが、子どもの尊厳、身体の安全、性的自己決定、成長発達を侵害する点にあります。児童は、年齢、経済的困窮、家庭環境、孤立、SNS上の関係性などにより、大人からの支配や誘導を受けやすい立場に置かれることがあります。
特に児童ポルノ被害は、撮影時点の被害だけで終わりません。画像や動画が保存、複製、拡散されることで、被害児童は長期にわたり不安や恐怖を抱えることがあります。加害者が一人であっても、インターネット上でデータが流通すれば、被害は繰り返し再生産されます。
支援では、児童を「非行」や「自己責任」として扱わないことが重要です。児童買春や児童ポルノの被害では、児童が表面的に応じているように見える場合でも、実際には大人との力関係、金銭的困窮、家庭内の問題、孤独感、脅し、画像拡散への恐怖などにより、自由な判断ができない状況に置かれていることがあります。
児童買春・児童ポルノ禁止法は、子どもの性的搾取を処罰する法律であると同時に、被害児童の保護を制度化する法律です。人身取引を理解する際には、成人の性的搾取や労働搾取だけでなく、児童が性的搾取の対象となる構造を含めて捉える必要があります。警察、こども家庭庁、児童相談所、学校、医療機関、民間支援団体が連携し、被害の発見、保護、心理的ケア、画像拡散への対応を進めることが重要になります。