基本的人権とは

基本的人権とは、人が人であることを理由として持つ権利のうち、憲法によって保障された基本的な権利をいいます。日本国憲法は、生命や自由、平等、表現、教育、労働、政治参加などに関する権利を定め、国の機関がこれらを不当に侵害しないようにしています。

1.基本的人権の意味

基本的人権は、国から与えられる利益ではなく、人が生まれながらに持つ権利であると考えられています。日本国憲法第11条は、憲法が国民に保障する基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」とし、現在と将来の国民に与えられると定めています。

「人権」と「基本的人権」は、ほぼ同じ意味で使われることがあります。ただし、人権は、人間の尊厳に基づいてすべての人に認められる権利を広く指す言葉です。基本的人権は、そのうち日本国憲法や各国の憲法によって保障され、国家権力を拘束する権利を説明するときに使われます。

基本的人権の中心には、個人の尊重があります。日本国憲法第13条は、すべての国民が個人として尊重されると定め、生命、自由及び幸福追求に対する権利について、公共の福祉に反しない限り、国政の上で最大の尊重を必要とするとしています。

基本的人権は、多数派の意見だけで内容を決めてよい権利ではありません。少数者や社会的に弱い立場に置かれた人を含め、個人の自由と尊厳を国家権力から守ることに、憲法上の権利として保障する意味があります。

2.制度・法律との関係

日本国憲法が保障する基本的人権は、その性質によって複数に分類されます。代表的なものとして、自由権、平等権、社会権、参政権、国務請求権があります。

自由権は、国から不当に干渉されず、自由に考え、行動するための権利です。思想及び良心の自由、信教の自由、表現の自由、居住及び移転の自由、職業選択の自由などが含まれます。逮捕、勾留、捜索、刑罰などに関する刑事手続上の保障も、国家権力による身体の自由への侵害を防ぐ役割を持ちます。

平等権は、人種、信条、性別、社会的身分、門地などを理由として、不合理な差別的取扱いを受けない権利です。日本国憲法第14条が法の下の平等を定めています。平等は、事情の異なる人を常に同一に扱うことではなく、取扱いの違いに合理的な理由があるかを検討する原則でもあります。

社会権は、国に対して、人間らしい生活を支えるための制度や施策を整えるよう求める権利です。健康で文化的な最低限度の生活を営む権利、教育を受ける権利、勤労の権利、労働者の団結権などが含まれます。

参政権は、選挙などを通じて国や自治体の政治に参加する権利です。国務請求権には、裁判を受ける権利、請願権、国や自治体の違法な行為によって損害を受けた場合に賠償を求める権利などがあります。

憲法上の権利は、主として国会、内閣、裁判所、自治体などの公権力を拘束します。職場、学校、企業、家庭など私人間の問題では、民法、労働法、個人情報保護法、差別を防止する個別法などを通じて、基本的人権の考え方が具体化されます。

3.人権上の論点

基本的人権は無制限に行使できるものではありません。他人の生命、身体、名誉、プライバシーなどと衝突する場合には、権利相互の調整が必要になります。表現の自由が保障されていても、他人への脅迫、名誉毀損、プライバシー侵害まで当然に認められるわけではありません。

ただし、「法律で禁止されているから」という理由だけで、基本的人権への制約が正当化されるわけではありません。法律そのものが憲法に適合していなければならず、制約の目的、必要性、対象、方法、影響が合理的な範囲に収まっているかを検討する必要があります。

権利が法律に記されていても、費用、情報不足、相談先の不在、障害、言語、年齢、在留資格、周囲からの偏見などによって、実際には権利を行使できない場合があります。形式上は同じ権利が保障されていても、置かれた状況によって利用のしやすさに差が生じます。

基本的人権を現実に保障するには、人権侵害を禁止するだけでなく、相談、調査、裁判、行政上の不服申立て、被害回復、合理的配慮、社会保障などの制度が必要です。基本的人権は、憲法の条文に記された理念であると同時に、国や自治体の制度が個人の自由、平等、生活をどこまで保障しているかを判断する基準です。

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