フィリピンで高校生・大学生13人が国際協力を体験 子どもの権利と現地の暮らしを学ぶ

スポンサーリンク
スポンサーリンク
この記事のポイント

1.フリー・ザ・チルドレン・ジャパンが9月3~10日、フィリピンで高校生・大学生13人を対象としたスタディツアーを実施した。
2.参加者は先住民族アエタの村や子どもの保護施設、JICA、UNICEF、日系企業を訪れ、現地の人々と交流した。
3.子どもの保護と自立支援、文化の尊重、地域の人々と協働する国際協力のあり方を学ぶ機会となった。

“世界で働く”をリアルに学んできました!【報告】フィリピン・スタディツアー
スポンサーリンク
スポンサーリンク

7泊8日で国際協力の現場を訪問

認定NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン(FTCJ)は2026年9月3日から10日まで、フィリピンで「国際協力の現場と世界で働く人に出会う旅」と題したスタディツアーを実施した。全国から高校生・大学生13人が参加し、同行スタッフ2人を含む15人が、オロンガポ市、スービック経済特区、首都マニラなどを訪れた。現地のNGO、先住民族の村、子どもの保護施設、日系企業、国際協力機関などを巡り、国際協力の実際や海外で働く人々の経験を学んだ。FTCJは10月17日、7泊8日の活動内容を報告した。

先住民族アエタの村で文化と生活を体験

参加者はツアーの序盤、フィリピンの先住民族アエタの村を訪問した。現地の子どもたちと折り紙やボール遊び、歌やダンスなどで交流し、7つの家庭に分かれてホームステイを体験した。村では地元の食材を使った料理を味わい、翌日は農園で柑橘類のカラマンシーの植林活動に参加した。家庭で過ごす時間や地域の人々との交流を通じ、生活環境や文化の違いに直接触れる機会となった。

先住民族の権利を考える際には、言語や文化、伝統的な生活様式、地域との結び付きなどを尊重するという問題がある。国際社会でも、先住民族が自らの文化や伝統を維持し、地域の将来について意思決定に参加する権利などが議論されてきた。2007年に国連総会で採択された「先住民族の権利に関する国際連合宣言」は、先住民族の文化や伝統、教育、自己決定などに関する権利を定めた国際的な文書である。ただし、宣言の内容を、そのまま今回訪問したアエタの村の個別事情に当てはめることはできない。現地の暮らしを学ぶ際には、外部の価値観だけで生活のあり方を判断せず、地域の人々自身の経験や意思を知ることが基本となる。

子どもの保護施設で虐待と自立支援を学習

ツアーでは、現地パートナーNGO「プレダ基金」が運営する子どもの保護施設も訪問した。3日目には、法律に触れたことによって保護された少年や、虐待などから保護された少年たちの施設を訪れた。施設職員から、子どもが困難な状況に置かれる背景として、貧困や保護者によるネグレクトなどの問題について説明を受け、少年たちとの交流も行った。

4日目には、性的虐待や性的搾取の被害から保護された少女たちの施設を訪問した。参加者は、心理的な回復を支援するための活動や、子どもたちが自立に向けて受けるプログラムについて学んだ。保護施設での経験は、子どもが抱える問題を本人の行動や性格だけで判断するのではなく、家庭環境や生活状況、必要な支援と併せて理解するための学習となった。

こうした活動と関係が深いのが、1989年に国連総会で採択された「子どもの権利条約」である。第19条は、虐待や不当な取扱いなどから子どもを保護するための措置を、第34条は性的搾取や性的虐待からの保護を定めている。第39条では、虐待や搾取などの被害を受けた子どもの心身の回復と社会復帰を促進するための措置について規定する。

これらの権利は、単に危険な環境から子どもを保護すれば十分だという考え方ではない。安全が確保された後も、心身の回復や学習、生活の再建など、子どもの状況に応じた支援を考えることにつながる。今回の施設訪問でも、被害に至った事情だけでなく、保護された後の生活や回復の過程が学習内容となっていた。

JICAとUNICEFで海外の仕事を知る

ツアー後半には、スービック経済特区にある日系企業「ニデックスービックフィリピン株式会社」を訪問した。参加者は企業の事業内容や工場での仕事について説明を受け、海外の職場で異なる文化や価値観を持つ人々と協働することについて学んだ。仕事に必要な能力を語学力だけで捉えず、現地の文化を尊重しながら意思疎通を図ることも、訪問先で紹介された内容の一つだった。

マニラでは、国際協力機構(JICA)と国連児童基金(UNICEF)のフィリピン事務所を訪問した。JICAは日本の政府開発援助などを通じて開発協力を担う機関、UNICEFは子どもの権利の実現や生活環境の改善などに取り組む国連機関である。両者は組織の性格や活動の仕組みが異なるが、フィリピンにおける国際協力の現場を学ぶ訪問先となった。

UNICEFフィリピン事務所では、日本人職員の伏見暁洋さんから、フィリピンの教育課題や国際機関で働くまでの経験について話を聴いた。JICAでも職員の仕事内容やキャリア形成について説明を受けた。国際協力を、海外への支援という抽象的な活動だけでなく、仕事や進路の選択肢として考える機会にもなった。

現地の人々と共に考える国際協力

帰国前日には、マニラのナボタス地区で活動する現地NGO「KPACIO」の協力を得て、参加者が2~3人のグループに分かれ、5つの家庭を訪問した。現地の若者との交流や、KPACIOのスタッフ、国際協力の実践者である松浦宏二さんらとの意見交換も行われた。

松浦さんは、自身の経験を交えながら、支援対象となる人々のために一方的に行動するのではなく、人々と共に活動する姿勢の大切さを伝えたという。これは、支援を受ける地域の人々も、自分たちの生活や将来について意思を持つ主体であるという考え方につながる。地域の課題を外部の人間だけで定義するのではなく、現地の人々と対話し、必要な活動を共に考えることは、国際協力と人権を結び付ける基本的な考え方の一つである。

FTCJは、子どもを支援や保護の対象としてだけでなく、社会に変化を起こす主体として捉え、子どもや若者の社会参加を支援している。今回のツアーでは、先住民族との交流、子どもの保護施設の訪問、企業や国際機関の視察を通じ、異なる立場の人々と共に考える経験が重ねられた。FTCJは、参加者が現地で学んだことを、自分の進路や今後の社会参加について考える機会として報告している。

出典

認定NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン「“世界で働く”をリアルに学んできました!フィリピン・スタディツアー」
URL:https://ftcj.org/news/52872/

フリー・ザ・チルドレン・ジャパン「子どもの権利」
URL:https://ftcj.org/activities/ourchallenges/childrights/

フリー・ザ・チルドレン・ジャパン「私たちについて」
URL:https://ftcj.org/overview/

こども家庭庁「児童の権利に関する条約 全文」
URL:https://www.cfa.go.jp/policies/international/convention/text

スポンサーリンク
スポンサーリンク
人権ニュース編集部

人権ニュース編集部は、官公庁、自治体、裁判所、企業、公益団体、国際機関などが公表する一次情報を確認し、差別、子ども、障害者、高齢者、教育、福祉、司法・制度、外国人、ビジネスと人権などに関するニュース、制度解説、独自調査を発信しています。記事では出典を明示し、事実関係を確認したうえで、関連する法制度や統計、過去の経緯などを参照しながら、人権上の論点や社会的背景を整理しています。

人権ニュース編集部をフォローする
国際教育
シェアする
タイトルとURLをコピーしました